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■ 第175回 健康診断を活かす ■
~白血病と闘う その8~

医師 小澁 陽司
     

             
  当コラムではこれまで、白血病を4つに
 大別し解説をしてまいりました。
  今回はその最後となる、「慢性リンパ性
 白血病」についてのお話です。

  ④慢性リンパ性白血病(CLL):白血
 球の重要な構成要素であるリンパ球をさら
 に細かくみていくと、Bリンパ球、Tリン
 パ球、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)
 などといった免疫に関係が深い血球に分類
 されることは、前回ご説明いたしました。
  それらを産生するリンパ系幹細胞が白血
 病細胞化(がん化)し、無制限に増殖を始
 めてしまうのがリンパ性白血病であること
 も、すでにご理解頂いていることでしょう。
  今回ご紹介する慢性リンパ性白血病は、
 上述したリンパ球のうち、「Bリンパ球」
 ががん化して勝手気ままに増殖するため起
 こる病気です。
  このCLLの最大の特徴は、欧米人に発
 症する率が圧倒的に高く、日本人や中国人
 といったアジア人には極めて少ないという
 ことです。我が国で白血病の代表とされる
 のが急性骨髄性白血病であるのと同様の感
 覚で、欧米では本疾患が代表的な白血病で
 あると捉えられています。
  ちなみに、欧米でCLLは全白血病数の
 約30%を占めていますが、日本では全白
 血病の2~3%を占めるに過ぎません。
  本疾患の詳しい発症原因はまだ解明され
 ていませんが、欧米に移住した日本人が日
 本とは異なる生活環境の中で欧米式の食生
 活を送っていても、慢性リンパ性白血病の
 発症率はやはり低いままであるという研究
 データが出ていることから、発症には人種
 による遺伝的な要因が強く関与していると
 考えられ、具体的には白人および東欧系や
 ロシア系のユダヤ人に好発することが分か
 っています。
  また、もうひとつの大きな特徴として、
 CLLは小児にほとんど発症しないことも
 挙げられます。最も多いのは50~60歳
 以上の男性であり、女性の3倍ほど発症頻
 度が高いのも有名です。
  さらに本疾患は初期症状に乏しく、診断
 されたあとも極めて緩徐な経過を辿ること
 が知られていて、上手くいけば、治療をし
 ないまま無事に一生を送れるケースもあり
 ます。多くの場合、健康診断や偶然行った
 採血検査などで白血球数増加(特にリンパ
 球増加)を指摘され、それをきっかけに発
 症しているのが分かるといった程度のこと
 で、病状そのものに深刻さがあまり認めら
 れません。
  その上、もし自覚症状があったとしても、
 微熱、倦怠感、食欲不振、体重減少、リン
 パ節の腫れなどといった普通の感冒症状に
 似ているものばかりですので、日常生活に
 大きな不便を感じないのです。ただし、病
 気が進行すると他の白血病のように、骨髄
 の中で正常な血球が作られなくなるため、
 貧血や皮下出血、感染症にかかりやすいな
 どの強い症状が出現してきます。
  このような場合は治療が必要となります
 が、治療の際は完全な治癒を目指すという
 のがなかなか困難であることから、症状を
 長期にわたって抑え込むという点に主眼が
 置かれているのが現状です。たとえば赤血
 球数や血小板数の減少に対して、赤血球輸
 血や血小板輸血を行ったり、感染症に対す
 る抗生物質の投与といった対症療法の他、
 抗がん剤や分子標的治療薬、放射線療法な
 どが行われています。

  現在、我が国では症例数の少ないCLL
 ですが、実は近年、患者数が少しずつ増加
 傾向にあることが分かってきました。他の
 3つの白血病と比べ、確かに珍しいタイプ
 の病気であるとはいえ、今も一生懸命闘病
 されている患者さんがいらっしゃることを
 忘れぬよう、CLLという疾患のことを皆
 様の頭のどこかにお留め置き頂きたく存じ
 ます。























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