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■ 第171回 健康診断を活かす ■
~白血病と闘う その4~

医師 小澁 陽司
     

             
  前回の当コラムを執筆し終えた直後の2
 019年4月22日、女性デュオ「あみん」
 のメンバーとして知られる歌手の岡村孝子
 さんが、急性白血病に罹患されていること
 を公表されました。

  本年2月の池江璃花子選手のニュースに
 衝撃を受けた筆者が、ささやかながら池江
 選手にエールを送ろうと当コラムで白血病
 についての執筆を開始した矢先の出来事で
 あり、著名な方々がこのような短期間に続
 けて急性白血病であることを公表されると
 いう異例の事態に及び、正直なところ驚き
 を隠せません。
  まして、岡村さんが「待つわ」などの名
 曲を世に送り出した1980年代初頭は、
 高校生だった筆者の多感な時期とちょうど
 合致していて、テレビの歌番組においてメ
 ランコリックな内容の歌を優しい声で歌う
 その姿が憧憬の対象であったことからも、
 今回の白血病の公表は個人的な時の流れま
 で包括し、より劇的に筆者の心へ突き刺さ
 ったのです。

  そんな中、岡村さんは闘病生活に入るに
 あたり、ご自身のインスタグラムにおいて
 前向きに頑張っていくという意思表明をさ
 れ、決して楽ではない今後の治療に真正面
 から臨む決意を漲らせておられます。
  また、現在闘病を続けておられる池江選
 手も、5月8日にご自身が開設されたオフ
 ィシャルホームページにおいて、治療は順
 調に進んでいるとの嬉しい報告をして下さ
 いました。

  現代医学の進歩によって、お2人をはじ
 めとする白血病患者さんに光明が差してい
 ることを疑う余地はありません。

  私たちはこれからも、自分自身の健康状
 態に細心の注意を払いながら、白血病と闘
 う方々が再びお元気な姿を取り戻すその日
 まで、陰に陽に応援を続けていこうではあ
 りませんか。

  ①急性骨髄性白血病(A  M  L):さて、
 ここからは4種類の白血病について、夫々
 ご説明して参りましょう。
  まずは、急性骨髄性白血病から。

  そろそろ皆様にも見覚えのある単語にな
 ってきたのではないかと思いますが、好中
 球や好酸球、好塩基球といった我々の血液
 中に存在している白血球の構成要素である
 血球(顆粒球)のルーツに相当するのが、
 骨髄系幹細胞が分化したあとの「骨髄芽球」
 と呼ばれる段階のものです。
  通常なら、成長とともに名称が変わるブ
 リなどの出世魚のように、骨髄芽球は順当
 に成熟していくと、やがては正常な機能を
 備えた白血球に成長していきます。
  しかし、骨髄芽球が未熟な段階のままそ
 れ以上成長せず、何らかの原因で白血病細
 胞に変化してしまうために起きる病気が、
 この急性骨髄性白血病なのです。
  その結果、白血病細胞に占拠された骨髄
 の中では正常な機能を持った白血球を作る
 ことが出来なくなり、赤血球や血小板など
 の産生も困難になってしまうため、それら
 を原因とする様々な身体症状が次々と出現
 することになります。
  急性骨髄性白血病の代表的な初期症状は、
 正常な白血球が減少するために起きる免疫
 力の低下、すなわち感染症に対し弱くなる
 こと、そして赤血球が減るために起こる貧
 血や、血小板が少なくなるために出血が止
 まりにくくなることなどで、症例として典
 型的なのは、「ある日急に喉が腫れ上がっ
 て激痛となり、高熱も出ているため病院で
 抗生物質をもらって内服したけれど改善せ
 ず、そのうち息切れやだるさ、さらに鼻血
 が出るようになったので精密検査を受けた
 ところ、急性白血病であることが判明した」
 という展開でしょう。
  実際、筆者が大学病院勤務時代に経験し
 た急性白血病も、上記とまったく同じ経過
 を辿って入院された方が何人もいらっしゃ
 いました。
  この疾患は、重症化する前にいかに迅速
 に診断を付け、適切な治療を開始するかど
 うかにかかっているのです。

  今号はここで紙面が尽きました。
  次号でも、急性骨髄性白血病の解説を続
 けて参ります。



















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