kenkou_bunner.gif
■ 第169回 健康診断を活かす ■
~白血病と闘う その2~

医師 小澁 陽司
     

             
  白血病のお話を始める前に、まずは「白
 血球」についてご説明をいたしましょう。
  白血球の役割に関しては、すでに平成1
 7年7月の当コラムで簡単に解説していま
 すが、あれから14年も経っていますので、
 この機会に今一度おさらいをしてみたいと
 思います。

  私たちの体の血液中には血球という成分
 が存在しており、それが血漿という液体に
 乗って血管内を通り全身をくまなく流れて
 います。血球にはいくつか種類があり、そ
 の代表的なものとして挙げられるのが白血
 球、赤血球、血小板の3つです。
  赤血球は、肺から取り入れた酸素を全身
 の臓器や細胞に送り届けるのが主な役目で、
 血小板は外傷などで血管が傷付き、そこか
 ら出血した場合に簡単な止血をしてくれる
 役目を担っています。
  そして、白血球は主として全身の免疫機
 能を保つために働いてくれる血球です。
  自分にとっての異物を体から排除して身
 を守るための防御機能のことを「免疫」と
 呼びますが、白血球は体に侵入してきた微
 生物と戦う軍隊としての機能を持つことと、
 体内で発生したがん細胞への攻撃を行って
 くれることで知られています。
  しかし、白血球と一口に言っても、1個
 の白い球があらゆる免疫機能を備えて活動
 しているわけではありません。
  意外と認識されていないことですが、白
 血球はそれぞれの役目を持ったいくつかの
 種類の血球に分類され、それらを総称して、
 便宜上「白血球」と呼ばれるのです。
  例えば、白血球を構成する要素として最
 も数多く存在するのが「顆粒球」。顆粒球
 だけで白血球数全体の3分の2を占めてい
 ますが、これもさらに細かく分類されてい
 て、それぞれ好中球、好酸球(アレルギー
 反応に関与)、好塩基球(何らかの形で免
 疫に関与)という名前が付けられています。
  その中でも好中球は顆粒球全体の9割以
 上を占める最大派閥で、免疫機能の上では
 主として細菌や真菌(カビ)と戦ってくれ
 る兵隊のような存在です。
  病原性を持った細菌が私たちの体内に侵
 入すると、人体は自動的にそれらの外敵の
 性質を察知して専用の武器を製造し、細菌
 専門の兵隊である好中球の数を増員して総
 攻撃を行うことで外敵を倒すメカニズムを
 備えています。
  風邪などの細菌感染症が起こった時に病
 院で採血を受けると、その結果を見た医師
 から「白血球数が増加していますね」と言
 われたご経験のある方も多いと思いますが、
 これは白血球の最大派閥である好中球が細
 菌対策として大増員された結果なのです。
 また、同じく細菌感染症の際に高熱が出る
 のは、好中球と細菌の戦闘によって戦場が
 燃え上がるためであり、その炎が採血上で
 はC  R  Pと呼ばれる炎症反応として反映
 され、正常値の何倍もの高値を示すという
 ことも、病院での検査を体験された方なら
 きっとご存じでしょう。
  ちなみに、風邪の時に出る黄色や汚い色
 の痰および膿は、好中球と細菌が戦って相
 討ちした結果に発生する双方の死骸であり、
 こうやって人体は細菌に打ち勝ちながら日
 常生活を無事に送っていくことが出来るわ
 けです。
  そのほか白血球には、リンパ球や単球と
 いった免疫に関係している重要な血球が含
 まれていることも忘れてはいけません。
  単球は免疫反応が始まる際に先陣を切っ
 て活動することが分かっており、白血球数
 全体の5%程度であるにもかかわらず、極
 めて大切な血球です。
  一方、リンパ球は白血球数全体の3分の
 1ほどを占めていて、主としてウイルスや
 がん細胞へ攻撃を加えてくれるため、好中
 球と並び人体に必要不可欠な存在であると
 言えます。
  これらの白血球は普段、赤血球や血小板
 と一緒に骨髄内の造血幹細胞という細胞で
 作られています。
  不幸なことに、ある日突然骨髄の中で、
 この造血幹細胞が腫瘍細胞へ変化し、無限
 に増殖し始めてしまうことがあります。そ
 の腫瘍細胞は白血病細胞と呼ばれ、「血液
 のがん」と称されることからも分かるよう
 に、骨髄の内部をどんどん占拠するため、
 ついには正常の血球を製造することが困難
 になるという事態を引き起こします。

  これが、白血病なのです。

















(C)2000 The Soka Chamber of Commerce & Industry. All rights reserved.
E-mail:
sokacci@sokacity.or.jp
バックナンバー