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■ 第159回 健康診断を活かす ■
~知っておきたい「健康診断の基礎知識」その105~

医師 小澁 陽司
     

             
  今回は膵臓をさらに理解するため、その形状や機能についてのお話をいたしま
 しょう。



  ①膵臓の形状:前号でもご説明しましたが、膵臓は左右に細長く伸びた臓器で、
 右側(十二指腸に接している側)の一番大きい部位を「膵頭部」、真ん中の部分
 を「膵体部」、そして一番左側(脾臓に接している側)の細く尖っている部位を
 「膵尾部」と呼んで区別しています。
 
 また、膵頭部の最も右端は下向きに反転し、まるで釣り針のような形に見えるた
 め、その部位だけは「膵鉤部(すいこうぶ)」と呼ばれます。
 
 「鉤」は英語でいうところの「フック」ですので、このほうがより形状をイメー
 ジしやすいかもしれません。
 
  そして、膵臓の表面は「腺房」と呼ばれる細胞の塊にびっしりと覆われ、全体
 がその腺房によって粒々(凸凹)に見えることから、医療関係者が膵臓の外観を
 皆様にご説明する際、「トウモロコシに似ている」と表現することがあります。
 
  確かにそれが最も的確ではあるのですが、筆者は頭の中で膵臓の外観を想像す
 ると、いつも必ず焼鳥屋さんの「つくね」を思い出してしまいます。そう、あの
 木の串に刺さり、ほどよく焼かれて出てくる美味しいつくねです。
 
  それは何故かといいますと、つくねの真ん中に刺さっている串を抜けば、つく
 ねの本体には空洞が出来ますよね?これと同じような空洞が、膵臓の真ん中にも
 通っているからなのです。ただし正確に言うと、膵臓の真ん中を貫いているのは
 空洞ではなく、「管」なのですが。
 
  このご説明はのちほど。



  ②膵臓の機能:膵臓が人間の体内で担当している主な機能は2つ。
  1つめは、膵液という消化液を産生して十二指腸内に分泌し、胃から流れてき
 た食べ物に含まれる栄養分をさらに細かく分解したり、胃液にまみれて酸性にな
 った食べ物を中和(膵液は弱アルカリ性)して腸での消化を助ける役割で、これ
 を「外分泌機能」と呼んでいます。
 
  先ほど膵臓の外観のところで少し触れましたが、腺房と呼ばれる細胞の塊を構
 成するのが腺房細胞で、ここで分泌された膵液は導管という細い管を通って少し
 ずつ太い膵管へと合流し、最終的には一番太い「主膵管」に流れ込みます。
 
 この主膵管こそ、前項で例えたつくねの真ん中の空洞に相当する部分であり、主
 膵管へ流入した膵液は、管の先端が接続している十二指腸内へとそのまま分泌さ
 れていく仕組みになっているのです。
 
  膵臓とつくね、なんとなく似ていると思うのは筆者だけなのでしょうか…。
  
  ちなみに、膵液に含まれる消化酵素として最も有名なのは「アミラーゼ」で、
 これは糖質を分解する役目を担います。その他にも、脂肪を分解する酵素である
 「リパーゼ」や、タンパク分解酵素である「トリプシン」などが含まれています。
 
  この膵液と、肝臓で産生される消化液の胆汁が一緒になって十二指腸内に流入
 することにより、食べ物の消化と吸収が腸内において容易になるのです。



  そして膵臓の2つめの機能は、膵臓内のランゲルハンス島という部位において
 インスリンやグルカゴンといったホルモンを産生し血液中に分泌すること。これ
 は「内分泌機能」と呼ばれます。
 
  インスリンは、食事によって上昇した血糖を細胞内に取り込んだり、糖分をグ
 リコーゲンに変えて肝臓内に貯蓄することによって血糖値を低下させるホルモン
 ですから、インスリンの分泌が悪くなると血糖値が下がらなくなり、糖尿病を引
 き起こす原因になってしまいます。
 
  また、グルカゴンはインスリンと逆に血糖値を上げるホルモンなので、食事が
 摂れない時などは肝臓内に貯蓄したグリコーゲンを元の血糖に戻し、低血糖によ
 って体の各臓器が受けるダメージを回避してくれるという大事な役割を持ってい
 ます。
 
  以上のように、膵臓の持つ巧妙な内分泌機能によって人間の体は安定した状態
 を保つことが出来るのだといえるでしょう。

  外分泌機能も内分泌機能も、何れにせよ生命の維持に必要な機能であることが
 お解り頂けましたか?








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