今号も肺腺がんについての解説を続けます。前回の予告通り、肺腺がんと喫煙
との関係や肺腺がんの主な症状について、解りやすくお話しいたしましょう。
③肺腺がんと喫煙の関係
国立がん研究センターが発表した最新の研究結果によれば、我が国における肺
がんの原因として最も重大なのは「喫煙」です。
先述した肺がんの4つのタイプを個別に調べたところ、喫煙と特に密接な関係
を示しているのは扁平上皮がんと小細胞がんで、これら2つのタイプの肺がんを
合わせて分析すると、男性の喫煙者は非喫煙者に比べて約13倍、女性の場合は
約18倍もの方ががんに罹患していることが分かりました。
ところがその一方、腺がんを分析した結果、肺腺がんは「非喫煙者の女性に最
も多く発症する」という結論が得られているのです。
これだけ見れば、腺がんと喫煙との関係性は低いため、喫煙される方にとって
は一種の免罪符を獲得したような気持ちになるかもしれません。しかし、分析結
果をよく読むと、男女いずれも喫煙者が非喫煙者に比べ、2倍以上も腺がんに罹
患するという事実が厳然と存在しています。
つまり、肺腺がん対策として、やはり禁煙が必要であることに変わりはありませ
ん。
また、非喫煙者にとっては受動喫煙によって肺がん全体の発症リスクが上昇す
るという問題もあることから、国を挙げての受動喫煙防止対策を一刻も早くお願
いしたい次第です。
④肺腺がんの症状
腺がんに限らず、早期の肺がんには特徴的な症状が認められません。
がんが進行すると、長引く咳や血痰、呼吸困難、胸痛などが出現し、やがて疲
労感が強くなったり体重減少を来したりしますが、それらも肺がんだけに特徴的
な症状とは言えないのです。
とりわけ、腺がんはなかなか症状が出にくいことで知られています。その理由
として、腺がんは肺の中心部から遠い場所(肺野)に出来ることが多く、静かに
じわじわと進行していくために顕著な症状がなかなか出ないというのが実情です。
逆に、小細胞がんや扁平上皮がんは、左右の気管支が肺に入る場所(肺門)の
近くに出来ることが多く、その分、咳や血痰などが早くから出る可能性があるの
で、ご自分の体調に敏感な方ならすぐに外来を受診し、発見に至ることもあると
思われます。
しかし、基本的に肺がんは健康診断や人間ドックの肺検査で発見されることが
多いため、定期的な検診を欠かさないことが大切であることは間違いありません。
次回は「肺腺がん特集」の最終回になります。
肺腺がんの検査法や治療法など、がんに罹患された患者さんにとって最も重要
なお話をして本特集を締めくくりたいと思います。
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