いよいよ今回が大腸がんのお話の最終回となります。
④大腸がんの検査法
最も簡便かつ信頼性の高い検査法は、先述した便潜血反応検査でしょう。
最近は、便の中のごく少量の出血でも敏感に検出することが出来るようになった
ため、気になる症状のある方はもちろん、大人数で行う大腸がんのスクリーニング
検査法としても最適です。
そして、もし便潜血反応が陽性、すなわち少量でも大腸からの出血があると判断
された場合の精密検査や、最初から血便などの明らかな症状があるケースでは、大
腸内視鏡検査あるいは注腸造影検査(大腸バリウム検査)を行うことになります。
現在の主流は大腸内視鏡検査で、これは肛門から内視鏡を挿入して大腸の内側を
観察するものですが、内視鏡検査の最大の利点は、もし腫瘍などの病変が見つかっ
た時、悪性か良性かを診断するために大腸壁の組織を直接採取する、生検と呼ばれ
る検査も同時に行えることです。
一方の注腸造影検査は、肛門からバリウムを注入し、レントゲン写真を撮影して
大腸全体を観察するのみの検査法となります。
その他の検査法として、肛門から指を入れてがんの有無を調べる直腸指診や、主
に進行性大腸がんの時に上昇する腫瘍マーカーであるCEAやCA19-9を、採
血によって調べる方法もよく行われます。
また、以前は大腸がんが発見された際、他臓器へのがんの転移がないかどうか調
べることを主目的として行われていた腹部CT検査は、最近になり大腸病変そのも
のを調べるのに重用されることも多くなってきました。
⑤大腸がんの治療法
近年、最も頻繁に行われる治療法は、大腸内視鏡を使ってがんを切除する方法
(内視鏡的粘膜切除術など)や、がん化する前の大腸ポリープを摘除する方法
(ポリペクトミー)です。
この治療法は患者さんの体にかかる負担が少ない、大変理想的な方法なのですが、
残念なことに主として早期の大腸がんまでしか適応がありませんので、リンパ節転
移のあるような進行がんに対しては、従来通りの手術による治療が行われます。
手術法としては、開腹をして大腸がんおよび転移しているリンパ節を切除する伝
統的な方法に加え、最近では内視鏡の一種である腹腔鏡を用いて、最小限の傷をお
腹に開けるだけで手術を行う腹腔鏡下手術も盛んに行われるようになりました。
また、上記の治療法と併用して、抗がん剤を用いる化学療法や、がん細胞に放射
線を照射する放射線療法もよく行われています。
さて、最後は大腸がんの予後のお話で、3か月にわたって連載してきた当コラム
の掉尾を飾ることにいたしましょう。
実は大腸がんは、治療成績の良好ながんとして知られています。
リンパ節転移のある進行がんであっても、治癒率はかなり高いのです。
いずれにしても、いかにして早く発見するか、ということが肝心。
自覚症状がない早期がんの状態の時に、便潜血反応検査の捜査網でキャッチさえ
出来れば、多くの場合、怖いがんにはなり得ないことをご理解いただければ幸甚で
す。
我が国の音楽史にその名が燦然と輝く中村紘子さんは、誠に残念ながら不帰の客
となられましたが、ピアノ、そして人生に対するその情熱と信念は不朽であると思
います。
当コラムをご一読された皆さまは、これからも必ず健康診断や人間ドックの便潜
血反応検査を定期的にお受けいただき、是非とも確固たる信念を持って、よりよい
人生のために大腸がんの早期発見を実践なさってください。
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