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■ 第128回 健康診断を活かす ■
~ストレスチェック制度について②~

医師 小澁 陽司
     
 本年12月から開始される「ストレスチェック制度」の概要について、今号も
解説を続けます。
 具体的に、ストレスチェック検査は次のような内容になることが予定されてい
るので、わかりやすくまとめてみましょう。

 ①50人以上の従業員がいる会社(事業主)は、年1回、従業員の心理的な負
  担の程度を把握するための検査を必ず行わなければなりません。しかし、こ
  の検査を実施することは、あくまでも「会社側にとっての義務」ですので、
  従業員が必ず検査を受けなくてはならないということではありません。 

 ②その検査の方法は、「仕事上でストレスとなっている要因はないか」、「ご
  自身の心と体に出ているストレス反応はないか」、そして「周囲の方からの
  サポートを受けているかどうか」の3つの領域をチェックする調査票を用い、
  そこに現在のご自身の状況を従業員ご本人が記入します。

 ③検査は会社が直接行うわけではありません。会社から依頼された医師や保健
  師などの専門家のみが、この検査を実施できることになります。したがって、
  検査結果はそれを実施した医師などが従業員へ直接通知することになり、ご
  本人の同意のもとでなければ、ご自分の検査結果を会社側に教えてはいけま
  せん。

 ④検査を受けた方の中で、とても強いストレスがあると判断され、かつご本人
  が希望された場合、会社は医師による面接指導を必ず行わなければなりませ
  ん。そしてその結果に応じて、会社はその方に対する就業上の対策を行なう
  義務があります。さらに、その面接結果を理由として、会社が従業員に対し
  不当な取り扱いをすることは法律で禁止されます。

 その他、会社は検査の結果を(個人が特定できないように)集計して自社のス
トレス状況を分析し、職場環境の改善に役立てるよう努力する、といったような
「努力義務」と呼ばれる項目もありますが、ここで最も重要なのは、このストレ
スチェック検査の目的が、職場からメンタル系の患者さんを見つけ出して、それ
を会社側が掌握しようという目的で行われるのではないということです。

 つまり、この検査をお受けになったとしても、従業員のメンタル面にとって不
利な情報が会社に知られるわけではないことを理解していただかなくてはなりま
せん。

 それは、検査を受けた方が同意しない限り、その結果を会社に提出する必要が
ないことや、医師による面接を希望された方を不当に扱うこと(例えば、解雇や
退職勧奨、不当な異動など)を法律で禁止するといった内容が明記されている点
でも分かります。

 突き詰めると、今回のストレスチェック制度の根幹は、ストレスだらけのこの
社会で働く方々に対し、ご自身の現在のストレスの状況に気付いていただくよう
「促す」というところにあると言えるでしょう。

 そして、それがメンタルヘルスの不調を未然に防ぎ、仕事をしながら生きるこ
との幸せを実感していただけるようになれば、医療関係者としてこんなに嬉しい
ことはありません。

 実施までいよいよカウントダウンが始まったこの制度、しばらくは試行錯誤が
続くと思いますが、少しでも皆様のストレスを低減させる画期的な取り組みとし
て、私どもも全力を挙げてご協力したいと考えています。今後、是非多くの方々
にご活用いただけることを心から願っております。


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