前回の話題である「たばこ」について、折角の機会ですからもう少し
お話を続けましょう。
たばこを自分自身で吸う方々のみならず、その周囲にいることで間接的に
体内にたばこの煙を吸い込んでしまう、いわゆる受動喫煙を余儀なくされた
方々が、煙に含まれる有害物質によって発症する危険性のある病気のことを
「喫煙関連疾患」と言います。
一般的に、たばこの煙の中には約4000種類の化学物質が含まれており、
さらにその中の200種類以上が有害物質と言われていますが、それらの物
質が人体に取り込まれ、そこから惹起されると考えられる病気もまた極めて
多岐にわたっています。
以下、その喫煙関連疾患の代表的なものをご説明してまいりましょう。
①がん:たばこの煙の主要成分として知られているタールの中には、なん
と数十種類もの発がん性物質が含まれています。このタールによって引き起
こされるがんの代表が喉頭がんです。「喫煙イコール肺がん」というイメー
ジは強いのですが、実は喫煙との密接な関係が明らかなのは喉頭がんのほう
で、このがんを発症した患者さんの95%以上が喫煙者であるというデータ
ーが出ています。勿論、それに続いて肺がん、咽頭がん、口腔内のがん、食
道がん、胃がん、膀胱がんなど、たばこが様々ながんの発症リスクを高めて
いることも多くのデーターによって裏付けされています。
喫煙という行為で発がん性物質が黙って体内に侵入してくることを考える
と、禁煙したくなるのはごく当然のことですね。
②肺疾患(呼吸器疾患):呼吸によって空気中の酸素を体内に取り入れ、
不要になった二酸化炭素を体外に排出する大切な役割を担っている臓器が
「肺」です。空気の通り道である気道は、左右の肺の中で気管支、細気管支
と徐々に細くなり、最後に肺胞と呼ばれる部分になります。この肺胞で酸素
と二酸化炭素の交換が行われますが、喫煙によって肺内に吸い込まれた煙は
気管支に慢性的な炎症を起こし、やがて肺胞の構造を破壊してしまいます。
肺胞が破壊されると酸素交換が上手くいかなくなり、慢性的な咳や痰を伴っ
た呼吸困難などの症状を招くことになります。これがCOPD(慢性閉塞性
肺疾患)であり、たばこが原因と認められている治療困難な呼吸器疾患です。
以前から知られている肺気腫と慢性気管支炎をひとつにまとめた疾患だと思
えばよいでしょう。
肺胞の破壊を修復する根本的治療がないため、病期が進行すればするほど
症状は重篤になっていきます。最終的に、酸素の吸入を行いながら日常生活
を送ることになってしまう場合も多く、それを防ぐためにはまず少しでも早
く禁煙することが必須なのです。
次回も喫煙関連疾患の話は続きます。
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