さて、東日本大震災に関連した話題を途中に挟みつつ、数ヶ月に亘っ
てお送りしてきた「胃バリウム検査の所見」のご説明ですが、今回で最後と
なります。所見の数そのものはまだまだたくさんありますが、皆様のお手許
に届く健診結果をご理解頂くためには、これだけで充分でしょう。
⑧憩室:憩室とは、消化管の壁の一部分が風船のように丸く膨らみ、
そのまま消化管の外側に突き出して小部屋を形成してしまう状態をいいます。
ちょうど、焼いたお餅が膨れて大きくなり、お餅の本体から飛び出している
ような感じです。
原因には先天的な要素と後天的な要素があり、食道・胃・十二指腸・大腸
など多くの消化管で発生します。通常、食道・胃・十二指腸で発生した小さ
な憩室は無症状であることが多く、もしバリウム検査で見つかったとしても、
ほとんどの場合、内視鏡検査や治療を受ける必要はありません。
ただし、大きい憩室の場合には違和感や疼痛などを感じることがあります。
また、ごく稀に出血をしたり、憩室にがんを合併することがあるため、気に
なる症状が出現した場合は医師にご相談ください。
なお、今回のテーマからすると余談になりますが、大腸に出来る憩室は炎
症を起こしやすいことが知られており、それを大腸憩室炎と呼びます。憩室
炎になると腹痛や下血などの症状が認められ、治療として抗生物質を投与す
る必要があります。
⑨その他:それでは最後に、いくつかの所見名をまとめてご説明しま
しょう。
まずは「アカラシア」。
これは食道アカラシアとも呼ばれ、食道と胃をつなぐ部分を取り巻いてい
る筋肉がきつく収縮したままになる(原因不明)ため、食べたものが胃の中
に落ちず食道に溜まってしまい、その結果、食道が横に拡張してしまうとい
う疾患です。バリウム検査では、拡張した食道にバリウムが溜まるという特
徴的所見で有名です。
次に「食道裂孔ヘルニア」。
人間の体の中は横隔膜を境にして、上が「胸腔」、下が「腹腔」とに分け
られていますが、胸腔に存在する食道は腹腔にある胃とつながるため、横隔
膜に開いた穴(食道裂孔)を通り抜けます。その穴から、胃が食道とともに
上方の胸腔まではみ出してしまう状態を食道裂孔ヘルニアといいます。
これは、逆流性食道炎や食道がんの原因となることがあり、胃バリウム検
査でご指摘を受けた方は定期的な胃内視鏡検査をお受けになることをお勧め
します。
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