今回から、当コラムは「胃バリウム検査」の所見の解説に戻ります。
久し振りの再開ですので、バックナンバーの胃バリウム検査に関する拙文
をお読み直し頂ければ、これから解説する内容がよりスムースにご理解頂け
るかと思います。
それでは、始めましょう。
⑦粘膜異常:この、何とも言えないおどろおどろしい響きの所見名が結
果用紙に記載されていると、皆様はあまり愉快でない想像を余儀なくされる
と思います。
実際、健診に携わる医師が胃バリウム検査の写真を見て粘膜異常を疑った
時、その誰もが胃がんなどの悪性腫瘍の存在を念頭に置いていることは間違
いありません。
しかしこの所見は、二次検査(精密検査)の内視鏡で食道や胃や十二指腸
を詳しく調べてみると、大きな問題がないケースであることのほうが多いの
です。
つまり、粘膜異常という所見は、がんを疑うという前提がありながらも、
実際にはがんではない場合が多いということになります。
これは一体どういうことなのでしょうか。
実は粘膜異常とは、胃バリウム検査の写真を見る判定医が「この所見は、
偶然がんなどの異常所見に見えるだけで心配はないと思うけれど、100%
正常であるとは断言できない」という時に最も多く用いられる判定所見名な
のです。
ですから粘膜異常は、(ポリープや隆起性病変などのはっきりとした特徴
を持ったもの以外)少しでも変な所見であれば大抵のものが該当することに
なり、皆様がその名を見て「がんではないか?」と無闇に恐れる必要はない
所見とも言えます。
過去に当コラムでご紹介してきたニッシェやレリーフ集中(ひだ集中)、
胃潰瘍瘢痕なども、ある意味では粘膜異常の一種であると言えるでしょう。
では、粘膜異常という所見ががんではない可能性が高いのならば、二次検
査を受けなくてもよいのではないかと思われるとしたら、それは明らかに誤
りです。
再三ご説明してきたように、医学では「多分、大丈夫」は許されません。
病気に対し、少しでも疑わしきは罰するという姿勢で皆様の健康をお守り
する私ども医療関係者の信念に是非お応え頂き、結果用紙に「粘膜異常」と
の記載があったら、どうぞ必ず胃内視鏡検査をお受けください。
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