④胃潰瘍瘢痕および十二指腸潰瘍瘢痕:前回、当コラムでご説明
した「レリーフ集中」という所見名が、多くの場合、胃潰瘍の治ったあと
を意味しているということはご理解いただけたと思います。
この、胃潰瘍が治癒した状態をひとまとめにして表現すると、「胃潰瘍
瘢痕」という所見名になります。これが十二指腸潰瘍の場合ですと、もち
ろん「十二指腸潰瘍瘢痕」となるわけです(『十二指腸球部変形』と表現
される場合もあります)。
瘢痕とは、潰瘍によって傷付いた粘膜の組織が修復された状態を意味し、
いわば「傷跡」と同じことですから、一回瘢痕化すると胃や十二指腸の粘
膜にそのまま痕跡としてずっと残ってしまう場合が多く、毎年バリウム検
査で同じ場所に同じ所見を指摘される方が多数いらっしゃるというのは当
然のことなのです。
しかし現在、病院やクリニックの外来における胃・十二指腸潰瘍に関す
る検査法の主流は、胃がん同様、内視鏡検査へと移行しているため、実は
臨床の現場において胃潰瘍をバリウム検査で発見しようとすることは今や
ほとんどありません。
つまり、健診や人間ドックのみが、バリウムを使った胃・十二指腸潰瘍
の発見および経過観察に関与していることになります(もちろん胃がんに
ついても同様です)。
健診やドックのバリウム検査で新たに発見された胃・十二指腸潰瘍は、
その質的診断のためにいずれにせよ内視鏡検査が必要になるわけですが、
我々医師は当然、その時の潰瘍の状態を把握し、評価していかなければな
りません。
その判断をするための指標として、病期分類というものがあります。
胃・十二指腸潰瘍が進行し、やがて治癒していく過程には段階があり、
次の三つの段階に分類されています。
1)活動期(Aステージ):潰瘍が活発に活動している時期です。A1ス
テージは潰瘍部に出血やむくみを伴った最悪の状態で、A2ステージ
はそれが少し改善され、むくみが取れてやや白くなってきた状態です。
2)治癒期(Hステージ):潰瘍が回復してきた時期です。H1ステージ
は潰瘍が小さくなって正常組織が再生しはじめた状態で、H2ステー
ジはその再生がさらに進んだ状態です。
3)瘢痕期(Sステージ):これが今回のタイトルの時期です。潰瘍が治
り、赤色の瘢痕となったのがS1ステージ。それがさらに改善し、白
色の瘢痕となったのがS2ステージになります。
次回も胃・十二指腸潰瘍の話を続けます。
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