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■ 第53回 健康診断を活かす~知っておきたい「健康診断の基礎知識」その45~
 医師 小澁 陽司 ■
 前回ご説明した「心室細動」で、脈が速くなるタイプの不整脈である頻脈性不整脈の話は一旦おしまいです。今回は、その逆のタイプの不整脈のお話をいたしましょう。

 ⅱ)徐脈性不整脈:
 「徐脈」とは、脈が遅い(心拍数が1分間に30~40回くらいしかない)ことを意味します。心電図上、所見として認められるものは次のように分類できます。
(a)房室ブロック:
 この不整脈については、当コラムの第47回「③房室伝導障害」の項において、すでに詳しく説明しております。どうぞそちらをご参照下さい。
 (b)洞不全症候群:
 本コラムで何度も書いたことですが、復習を兼ねてもう一度。
 心臓という臓器は、洞結節と呼ばれる場所から規則正しく発生する電気に反応し、定期的に拍動しています。その洞結節になんらかの障害が起こると、そこから発生する電気の回数が減り、心拍数そのものが少なくなってしまいます。これを洞機能の不全状態といい、この状態により引き起こされる様々な疾患群を総称して「洞不全症候群」と呼びます。それでは、洞不全症候群に属する疾患を3つに分け、それぞれご説明しましょう。
 [Ⅰ群]洞性徐脈:
 脈のリズムは規則正しいのですが、脈拍数が1分間に50回以下になってしまう状態をいいます。通常、自覚症状は少なく、治療の対象にはならないことが多い徐脈です。
 [Ⅱ群]洞停止または洞房ブロック:
 この両者は、心電図上での鑑別が困難であるため、必ずこのように併記されます。洞停止とは、その名の通り洞結節の機能が一時的に停止してしまい、電気が心臓の筋肉まで届かないことをいいます。一方、洞房ブロックは、洞結節で発生した電気が何らかの理由で心房に伝わる前にブロックされ、やはり心筋まで届かないことをいいます。どちらも同じような心電図所見を呈しますが、いずれも徐脈となることには変わりなく、状態が悪化すると脳への血流量が減少し、めまいや失神などの症状が出現することもあり、薬物治療やペースメーカーを植え込んでの心拍数コントロールが必要になる場合もあります。
 [Ⅲ群]徐脈-頻脈症候群:
 これは、先述してきた洞結節の機能不全状態に、心房細動や心房粗動といった頻脈性不整脈の発作が合併するものをいいます。最初に頻脈発作が起こり、それが止まったあと極めて強い洞機能の停止が起こるもので、長く続けば失神発作のみならず、生命をも脅かす危険な状態を招きます。治療は、やはり薬物療法やペースメーカーの植え込みを行います。

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