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■ 第43回 健康診断を活かす
~知っておきたい「健康診断の基礎知識その36~ 医師 小澁 陽司 ■
 前回の続きです。

 今号からは二回にわたり、エコー検査(超音波検査)で実際にどのような疾患が発見されるかを、臓器別にご説明したいと思います。

 ①甲状腺:甲状腺は首の前側にあるホルモン分泌臓器で、その名の通り甲状腺ホルモンを産生しています。腫瘤性病変(甲状腺がん、良性腫瘍など)の発見や、バセドウ病(甲状腺が腫大する病気)の診断の一助として有用です。

 ②頚動脈:頚動脈は、心臓から脳に至る大事な血液の輸送路です。エコー検査で調べるのは、この頚動脈の動脈硬化や血管の詰まりの有無です。頚動脈の硬化は、全身の動脈硬化の度合も反映しているため、ここを調べると全身の動脈硬化のチェックが可能ということにもなります。また、血管壁が内側に隆起して出来る「プラーク」と呼ばれる病変は、血管壁から剥がれると血流に乗り脳へ飛んで脳梗塞を起こすことがあるため、その有無や状態を観察するのも頚動脈エコーの大事な役目です。

 ③乳腺:女性の乳房の内部は、乳腺・脂肪・結合組織で構成されていますが、そのうち乳腺に起こる疾患を観察するのがこの検査です。乳腺エコーで分かる疾患は、乳腺腫瘤(乳がんを代表とする悪性腫瘍や、乳腺繊維腺腫などの良性腫瘍)、乳腺症(良性疾患ですが、しこりが出来たり痛みを伴うことが多いので、乳がんとの鑑別が重要!)、乳腺嚢胞(乳管の中に分泌液が溜まって袋状になったもので、良性疾患です)、乳腺脂肪腫などがあります。

 ④心臓:心臓は、主として「心筋」という筋肉から出来ており、全身へ血液を送り出すポンプとして一生の間休むことなく動き続けています。ところが、心筋梗塞などの疾患になると心筋が壊死してしまうため、その部分の心臓の動きが悪くなります。このような、心臓のポンプ機能に影響を与える心疾患を調べるのに心臓エコーは適しています。心筋が厚くなってしまう肥大型心筋症、逆に心筋が薄くなってしまう拡張型心筋症なども同様に診断の対象となりますし、心臓弁膜症(僧帽弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症など)に対してもきわめて有用です。また、心臓の形態異常である先天性心疾患(心房中隔欠損症、ファロー四徴症など)や心臓腫瘍などの診断にも実力を発揮してくれるため、各種の超音波検査の中でもとりわけ重要な検査法であると言えるでしょう。



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