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■ 第36回 健康診断を活かす
~知っておきたい「健康診断の基礎知識」その30~ 小澁 陽司 ■
 糖尿病に関する採血項目の解説も、いよいよ大詰めです。最後は、2回にわたって「HbA1c《ヘモグロビンA1c》」についてご説明しましょう。

 この項目は、糖尿病をお持ちの方にとって、大変なじみ深い名前だと思います。何といっても、現時点において糖尿病の状態の良し悪しを決める最も重要な指標のひとつであり、極めて細かい数字の増減を巡って、患者さんと医師が一進一退の熾烈な攻防を繰り広げる、とても「熱い」数字だからです。糖尿病に縁のない方には関心のない項目かも知れませんが、明日は我が身と気を引き締め、是非ご一読ください。

 筆者がこのコラムを担当し始めて最初に解説したのは、「赤血球」に関する項目でした。

 その時、赤血球は血液中で酸素を運搬するためにヘモグロビンという専用シートを搭載している、と書きましたが、実は酸素の他に、血液中の糖(ブドウ糖)もくっつけて運搬してしまうことが知られています。

 酸素は、運ばれた先の臓器で未練なく離れていきますが、一度ヘモグロビンに結合した糖は執拗に離れようとせず、ついには赤血球の寿命である4ヶ月の間、一緒に体内を巡り続けます。その上、糖はヘモグロビンが赤血球と共に血中を移動する間にどんどん「合い乗り」をして、ヘモグロビンにたくさん結合してしまいます。

 この、糖がくっついた状態のヘモグロビンを「HbA1c」と呼び、赤血球が生きている間はヘモグロビンから糖が離れない性質を利用して、今から1~2ヶ月前のその人の血糖値の正確な状態を採血により調べることが出来るのです。

 そして、糖がヘモグロビンにたくさん結合していればいるほど血糖値は高いということになるため、HbA1cが高値であることはすなわち、その人の糖尿病の状態がより悪いということを意味します。従って、糖尿病を専門とする医師は、糖尿病患者さんのHbA1cをできるだけ正常範囲に保つため、日々腐心しているわけです。



以下、次号へ!





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