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■ 第27回 健康診断を活かす
~知っておきたい「健康診断の基礎知識」その21~ 小澁 陽司 ■
 「塩」が人間にとって重要なものであることは、言うまでもありません。古来より、「敵に塩を贈る」ことが美談とされているのは、人体にとって塩分が必要不可欠なものであり、それがなくなると生命活動の継続が困難になるという事実の傍証でもあるのです。戦国武将の上杉謙信が、塩の欠乏によって窮地に立たされていたライバルの武田信玄に塩を贈ったという話は有名ですが(実はこの話は研究者の間でも意見が分かれており、解釈が難しいところです)、これで贈ったものが塩ではなく他の食料品であったならば、ここまで有名な話にはならなかったことでしょう。今回は、この生命維持に必要不可欠な塩、すなわち「ナトリウム」についてお話いたしましょう。

 ナトリウム(Na)は、次回ご説明する予定のカリウムなどと同じく、「ミネラル」のひとつです。五大栄養素という、人間が生存する上で欠くことの出来ない要素のひとつであるミネラルは、生物が自分の体の中で産生することが不可能なものであり、どうしても外から取り入れなければならないものなのです。そして、その取り入れる方法として私たちは通常、「食塩」という形で口から摂取しているというわけです。

 さて、人体内におけるナトリウムの役割はさまざまですが、最も有名なものは、血圧コントロールへの関与でしょう。一般的に、塩分の摂りすぎが高血圧の原因になるということ(日本人にとって生命維持に必要な食塩量は、1日たったの1グラムで充分だと言われています!)はよく知られていますが、実はその詳細なメカニズムが完全に解明されているわけではありません。しかし、簡略化したイメージとして、食卓塩のフタが開いていると中の塩が湿気を吸収してすぐに固まってしまうように、塩には水分を引き寄せる性質があるため、経口的に塩分を摂りすぎると血管内のナトリウムが増加すると共に、その血管の周囲にある細胞内の水分を血管内に引き込んでしまい、血液量が増大し高血圧なってしまうと考えると、ご理解いただきやすいのではないでしょうか。

 ナトリウムのその他の役割としては、カリウムと連携して神経系の情報伝達に関与していることなどが挙げられていますが、それはまた次回にお話しいたします。



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