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■ 第22回 健康診断を活かす
~知っておきたい「健康診断の基礎知識」その17 小澁 陽司 ■
   さて、今回がいよいよ血清脂質シリーズの最終回、「中性脂肪」についてのお話です。

 以前にご説明した、今話題のメタボリックシンドロームの診断基準の中に、「高中性脂肪血症」が入っているのを、皆様ご記憶されているでしょう。

 今でこそ、このように注目されている中性脂肪ですが、かつて医学界では「コレステロールの方が重要」とされ、その存在意義がほとんど失われかけた時期がありました。しかし近年、高脂血症治療の新たな概念の登場と共に、中性脂肪は見事に復権を果たしたのです。

 またの名を「トリグリセライド」と言う中性脂肪は、出っ張ったお腹などに代表される、いわゆる体脂肪の原材料となるものです。

 食事によって体内に入った炭水化物(糖質)・脂質などは、生命を維持するために必要な分だけエネルギーとして消費されると、残りの余剰分が中性脂肪に変化して貯蓄され、(飢餓時などの)いざという時に活用出来る状態として保存されることになります。食べすぎや飲みすぎの結果、体内で余った中性脂肪が皮膚のすぐ下に蓄えられると、あの「体脂肪」と呼ばれるものになるわけです。

 中性脂肪が体脂肪として貯蓄されていく場所が、「脂肪細胞」です。この細胞は、若い頃に肥満していた人ほど体内で多く増えるため、やせていた人に較べ、太っていた人は中性脂肪をより貯蓄しやすい体質になってしまいます。最近、若年時の肥満歴が良くないと主張されるのは、そのためなのです。

 では最後に、中性脂肪の良い役割も説明しておきましょう。

 先述した、栄養が不足している時のエネルギー補給に活躍するほか、寒い時期に体の外へ体温(熱)を逃さないようにする役目や、車のバンパーのようなショックアブソーバーの役目を果たしてくれるため、体内の臓器を危険な状態にさらすことなく、私達は安心して生活することが出来るのです。「肉布団」というコミカルな言葉は、実に当を得た絶妙な表現であるわけです。





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