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■ 第157回 健康診断を活かす ■
〜5月病と6月病〜

医師 小澁 陽司
     


  春はお別れの季節であり、また同時に、新たな出会いの季節でもあります。
  
  学校を卒業して新社会人となられた方、転勤や転職などで違う職場に入られた
 方など、年齢を問わず新しい人生の始まりを迎えた方々が日本中にいらっしゃる、
 今はまさしくそんな時期なのですが、新しい環境や人間関係に対して自分がうま
 く適応できるのか、誰しも不安な気持ちを抱くのは当然のことでしょう。
 
 
  それを裏付けるかのように、我が国では4月の新年度になって新しい生活が始
 まり、ちょうど1ヵ月ほどが経過してゴールデンウィークが終わる頃になると、
 心や体の状態に変調を来す新人の方々が突如増えてくるため、以前からその現象
 を「5月病」と呼んで注意を払ってきました。
 
 
  最近は各企業の初期研修プログラムが1ヵ月にわたって実施されるようになり、
 5月初旬を過ぎて担当部署への配属が始まることから、その1ヵ月後に変調を来
 す新入社員が増えることを「6月病」と呼ぶようになってきたのですが、いずれ
 にせよ5月病も6月病も根本的には一緒のものなのです。
 
 
  ところが意外なことに、この5月病や6月病といった呼称は、医学用語として
 正式に認められた病名ではありません。あくまで便宜上そのように呼ばれている
 だけで、正確には「適応障害」という病名の一種であると考えられています。


  厚生労働省のホームページに記載されている適応障害の定義として、「ある特
 定の状況や出来事が、その人にとってとてもつらく耐えがたく感じられ、そのた
 めに気分や行動面に症状が現れるもの」とあるように、適応障害が起きる背景に
 はストレスなどのはっきりとした原因が存在します。

 
  それまでの学生生活からいきなり環境が激変した新社会人の方々や、今まで慣
 れ親しんできた仕事から全く違った環境での仕事に挑戦する転勤・転職組の方々
 が、当初抱いていた理想と現実とのギャップに悩みはじめ、直面するストレスへ
 の対応がうまくいかなくなった結果、心や体に変調を来して一時的な適応障害を
 起してしまうというのが5月病や6月病の正体であることは、これでご理解頂け
 るでしょう。
 
 
  では、このような状況で起こる適応障害の具体的な症状とはどのようなもので
 しょうか。先述の通り、精神的な症状と身体的な症状の両方が出現し、典型的な
 ものとしては、

 ・やる気が出ない。気分が落ち込む。
 ・すぐにイライラする。
 ・集中力がなくなった。
 ・思考がネガティブになりやすい(自分はこの会社に合っていないのではないか?
  などと考えてしまう)。
 ・朝、起きられない。あるいは起きていても布団から出られず、会社に行くのが
  億劫になった。
 ・夜、寝付けない。
 ・疲労感が強い。
 ・食欲がない。
 ・頭痛や胃痛、腹痛および下痢が多い(特に出社中、会社に近くなると起きやす
  い)。

  といったことが挙げられますが、その他には、普段はきちんとしていた身だし
 なみ(お化粧や髭剃りなど)が億劫になる、仕事上でのミスが増える、などの変
 化が現れやすいことも知られています。
 
 
  これら5月病や6月病の予後として、昔から決まり事のように言われていたの
 は、職場や仕事に慣れていく夏頃までに多くの方は自然に回復し、単なる通過儀
 礼として一件落着するというものでした。
 
 
  確かに今でも多くの方は、大きな問題を残さず回復されることは間違いありま
 せん。しかし、ストレスが多様化している現代社会では、紋切り型の考えで事態
 が解決することばかりではないのです。
 
 
  例えば、適応障害になりやすい方は、もともと几帳面(完璧主義者)で真面目
 で責任感の強い性格を持った人に多いため、そのまま強いストレスを受け続ける
 と、いわゆる「うつ病」に進展するという症例が年々増えているという指摘もあ
 ります。
 
 
  これからは、新しく入社された方のメンタル不調を5月病や6月病だと楽観視
 せず、日常の見守りを習慣化して本当のうつ病への進展を未然に防ぐよう、職場
 の先輩諸氏はより一層の愛情を持って新人さんに接して頂きたいと思います。






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