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■ 第156回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その103〜

医師 小澁 陽司
     


  今回も「副腎」のお話を続けたいと思います。今号では、副腎に起こる代表的
 な疾患についての解説をいたしましょう。

  まず基礎知識としてご理解頂きたいのが、副腎疾患の多くは副腎から発生する
 良性腫瘍と深い関係があるということです。
 
  腫瘍はその性質上、良性腫瘍と悪性腫瘍に大別されますが、副腎に起こる疾患
 の原因となる腫瘍は良性腫瘍がほとんどで、本来真っ先にご紹介するべき悪性腫
 瘍(副腎がん)はとても稀な存在なのです。
 
  従って、これから病気を解説していく順序も必然的に良性腫瘍に由来する疾患
 が先になる点を念頭に置き、何卒ご一読ください。

  @クッシング症候群:前回の復習となりますが、副腎はお饅頭などと同じよう
 に、皮と具の部分に分かれた二重構造を持っています。いわば「皮」の部分に相
 当する副腎皮質からはステロイドホルモンなどが分泌され、私たちの体の機能を
 正常に保ってくれているのですが、この副腎皮質にホルモン分泌機能を持つ腫瘍
 が発生し、腫瘍が自分勝手にステロイドホルモン(特にその中の『コルチゾール』
 というホルモン)を産生しはじめると、当然ながら体内のコルチゾールが過剰な
 状態になり、様々な障害を引き起こします。
 
 これが「クッシング症候群」と呼ばれるものです。
 
  ステロイドホルモンには血糖値や血圧を上昇させる作用があり、また骨粗鬆症
 を進行させることで有名です。このため、多量のコルチゾール分泌によって起こ
 るクッシング症候群では、満月様顔貌(顔が満月のように丸くなる)、中心性肥
 満(主にお腹だけが太る)、皮膚にあざが出来やすくなる、うつ状態になるとい
 った、体内ステロイド過多によって起きる特徴的な症状のほか、糖尿病、高血圧、
 骨粗鬆症の合併がしばしば認められるということになります。
 
  治療としては、外科的に副腎腫瘍を摘出するのが第一選択です。治療により多
 くの場合、先述の症状は改善します。
 
  A原発性アルドステロン症:この病気は、クッシング症候群と同じく副腎皮質
 にホルモン分泌機能を持つ腫瘍が発生し、ステロイドホルモンの一種であるアル
 ドステロンを過剰に分泌してしまうため起こります。
 
 さらに著名な原因がもうひとつあり、それは両側の副腎が腫大し「過形成」とい
 う状態になってしまうことで、その結果、アルドステロンを過剰分泌するケース
 です。
 
  血圧の調節を行うアルドステロンが体内で多くなる本疾患の代表的な症状は、
 もちろん高血圧。最新の研究では、高血圧と診断された患者さんの10%近くが
 この疾患に罹患している方だと言われており、長年にわたり普通の高血圧として
 治療を受け続けてきた方の中にも、実は本疾患が原因で血圧が高かったという事
 例が見受けられるようになりました。
 
  高血圧のほか、血液中のカリウムが減少することで起こる筋肉の麻痺、脱力感、
 しびれ、多尿などの症状があれば、原発性アルドステロン症を疑って検査をお受
 けになることをお勧めします。
 
  治療法は原因によって変化し、副腎腫瘍が原因の場合だとその多くが片方の副
 腎のみに発生するため、第一選択は手術による摘出となりますが、腫瘍が左右両
 側にある場合や、両側の副腎過形成がある時は薬物療法が選択されます。
 
  B褐色細胞腫:この副腎腫瘍は上記の2つと違い、副腎の真ん中にある「具」の
 部分に相当する副腎髄質から発生する腫瘍で、カテコールアミンと呼ばれる血圧
 のコントロールに関わるホルモンを勝手に分泌してしまうことにより、高血圧や
 頭痛、動悸や発汗などの症状を発作的に起こし、また高血糖も伴うようになる疾
 患です。
 
  余談ですが、よくスポーツ観戦などをしている際に興奮して、「アドレナリン
 が出てきた!」と叫ばれるアドレナリンとは、このカテコールアミンのことだと
 いうのはご存知でしたか?
 
  褐色細胞腫も治療の原則は手術による摘出ですが、この疾患で注意が必要なの
 は、わりと高い頻度で悪性腫瘍を合併する点です。他臓器への転移も多いため、
 褐色細胞腫と診断された場合には同時に肺や肝臓、骨などの検査も必要となりま
 す。
 
  C慢性原発性副腎皮質機能低下症:別名「アジソン病」。この疾患については、
 第143回の当コラムにおいてケネディ大統領の持病としてご紹介しましたので、
 詳細は割愛します。
 
 今回ご説明してきた病気と正反対の病態を持つこの疾患は、副腎でのステロイド
 ホルモンの分泌が少ないために起こります。治療法がステロイドホルモンの補充
 であることは、もうご理解頂けますね。
 
  D副腎がん:発生頻度が低く、とても珍しい疾患であるとはいえ、副腎がんは
 悪性度が高く、初期のうちに発見しづらい危険ながんのひとつです。無症状で経
 過することが多く、そのため進行してから発見されることが多いわけですが、今
 回ご説明した良性腫瘍と同じくホルモン産生機能を持ったがんの場合、クッシン
 グ症候群や原発性アルドステロン症の諸症状が出現することになります。
 
  もし高血圧や高血糖など、今までご自分にはなかった症状が急に出現してきた
 場合は、ぜひ一度副腎の精密検査をお受け頂くようお願いいたします。






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