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■ 第155回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その102〜

医師 小澁 陽司
     


  ちょうど1年前、アメリカ合衆国・トランプ新大統領の就任式がメディアを賑わ
 せていた頃に執筆中だった当コラム(第143回)において、筆者は故ケネディ元
 大統領が患っていた「アジソン病」という疾病につき、簡単なご説明をいたしまし
 た。
 
  復習になりますが、アジソン病は「慢性原発性副腎皮質機能低下症」の別名で、
 その名のとおり副腎皮質の機能が慢性的に低下している状態を示します。
 
  しかし、これだけの解説では、副腎がどんな臓器なのか、何をする部分なのかが
 よく分からない方も多かったのではないでしょうか。
 
  今回と次回の本コラムは、5か月ぶりに「腹部エコー検査所見」のご説明に戻り、
 今ひとつ馴染みはないながらも、人間が生命を維持するために大変重要な役割を持
 つ「副腎」について、アジソン病以外の副腎疾患も織り交ぜ、少し詳しくお話しを
 してみたいと思います。
 
 
  健康診断や人間ドックなどで腹部エコー検査をお受けになる場合、必ず調べなけ
 ればいけない臓器がいくつもあることは皆様ご承知ですね。
 
  たとえば、5か月前の当コラムで数回にわたるご説明を終えた腎臓などは、誰も
 が知る有名な臓器ですが、その腎臓の上部にちょこんと乗っている臓器について詳
 しく知っている方はほとんどいらっしゃらないでしょう。
 
  人間の体の背中側に左右一対で存在する腎臓には、左右それぞれの上に副腎とい
 う三角形の臓器が鎮座しています。手術などの際、肉眼で見ることができる場合に
 は、まるで腎臓が毛糸で編まれた三角形の帽子を被っているかのような姿だと表現
 できるのですが、日常的な臨床の現場で最も多用される腹部エコー検査においては、
 正常な副腎をきれいな画像として写し出すのがなかなか大変で、検査を担当するス
 タッフの熟練の技を必要とするのです。
 
  その理由としては、副腎1個の大きさが、高さおよそ1cm、横幅およそ3cm程
 度と小さく、さらに副腎の位置する場所が後腹膜と呼ばれる人体の背中側の隔離さ
 れた部分に当たり、そこで肋骨や腎臓といった臓器に守られながらひっそり存在し
 ているため、エコーの手技に熟達していないと副腎自体を発見すら出来ない場合が
 あります。
 
 
  ところが、そんな見つけにくい臓器である副腎はいわば「小さな巨人」で、人間
 が生きていく上で絶対に必要なホルモンを分泌している最重要臓器のひとつなので
 すから、決して侮れません。

  先程述べたように副腎は三角形をしていますが、その内部を見てみると二重構造
 になっており、いうなれば和菓子のお饅頭や中華料理の肉まんなどと同じく、「皮」
 と「具(餡)」の部分に分かれています。
 
  その、皮に相当する部位が「副腎皮質」、具に相当する部位が「副腎髄質」と呼
 ばれていて、それぞれ分担している役目がまったく違うのです。

 
  副腎皮質では、主としてステロイドホルモンが産生され、体内の糖の蓄積や利用
 および血圧をコントロールするコルチゾール、塩分やカリウムなどのミネラルバラ
 ンスをコントロールするアルドステロン、生殖に関係する性ホルモン(アンドロゲ
 ン)などが分泌されています。
 
  また、副腎皮質で作られるこれらのホルモンを総称して「副腎皮質ホルモン」と
 いい、上記以外の作用として炎症を抑えたり、免疫反応に関与するため、人工的に
 合成された薬が医療の現場でもよく使用されています。皮膚炎や湿疹などができた
 時に塗る「ステロイド軟膏」や、喘息の患者さんが使っている「ステロイド吸入薬」
 などの名称は、よく知られているでしょう。
 
  一方、副腎髄質からはストレス反応に関係するホルモンであるカテコールアミン
 (アドレナリンとノルアドレナリン)が分泌され、体が何らかのストレスを受けた
 時に血圧を上昇させたり、血糖値を上昇させるといった役割を果たしているため、
 こちらもやはり生命の維持に欠かせない大事な部位であることは間違いありません。
 
 この2つの部分を内包した小さな副腎が機能異常を起こしてしまうと、人体は一種
 の混乱状態に陥ってしまうのです。


 それでは次回は、副腎に起こる各種の疾患についてお話ししましょう。





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