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■ 第152回 健康診断を活かす ■
~肺の腺がんについて~

医師 小澁 陽司
     


  女優の野際陽子さんと、歌舞伎役者の中村獅童さん。
  2017年5月から6月にかけ、このお二人が罹患された肺の「腺がん」に
 ついて、実に数多くの報道がありました。
  
  人間ドックにおいて初期の肺腺がんが発見され、その治療を終えた中村獅童
 さんは、2017年11月に歌舞伎の舞台へ復帰される予定とのことで、順調
 な回復ぶりが伝えられています。
 
  しかし、数年にわたり果敢にがんと闘い続けた野際陽子さんは残念ながら他
 界され、今はただお悔やみを申し上げることしか出来ません。

  亡くなる間際まで現役の女優さんとしてご活躍され、凛とした姿勢を貫かれ
 たその強靭な精神力に、多くの人々が深い感銘を受けたことでしょう。
 
  また先日、若い世代に人気の高いあるミュージシャンがやはり同じ肺腺がん
 であることを発表し、現在闘病をされているという報道を目にいたしました。

 
  勇気ある方々が病と闘う姿を見せて下さることで、我が国のがん死亡率1位
 となった肺がんを克服しようとする意識は、世代を超越して今後さらに拡がっ
 ていくに違いありません。
 
  このような機運を受け、今号からは3回にわたり肺腺がんが一体どういう疾患
 であるかについて、肺がん全般のお話を絡めながら掘り下げていきたいと思い
 ます。



①腺がんとは?
  私たちの体には分泌腺という、人間の生命活動に必要な分泌物(たとえば涙、
 汗、胃液、乳汁、各種のホルモンなど)を作り出す器官があります。この分泌
 腺を構築しているのが「腺細胞」で、ここから発生する悪性腫瘍が「腺がん」
 です。
 
  分泌腺は体中の臓器に多数存在しているため、腺がんは肺だけでなく、ほか
 の様々な臓器からも発生します。肺以外で腺がんが出来る代表的な臓器を並べ
 てみると、胃、大腸、乳腺、膵臓、胆嚢、腎臓、卵巣、前立腺など、枚挙にい
 とまがありません。
 
  意外なほど身近な存在のがん、それが腺がんなのです。


②肺がんの種類
  肺がんは、がんが発生してくる細胞の種類により、「腺がん」、「扁平上皮
 がん」、「小細胞がん」、「大細胞がん」の4つに分類されています。
 
  この中で最も悪性度の高いタイプが小細胞がんです。そのため現在では、治
 療をする観点から「小細胞がん」と「非小細胞がん(小細胞がん以外の3つの
 タイプのがん)」に分けて考えるのが一般的になっています。
 
  小細胞がんが肺がん患者全体の20%弱であるのに対し、全体の50%以上
 を占めている腺がんは、最も一般的な肺がんだと言えるでしょう。


 次回は、肺腺がんと喫煙との関係や、肺腺がんが引き起こす症状について解説
 いたしましょう。





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