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■ 第150回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その101〜

医師 小澁 陽司
     


 これまで1年半以上にわたりお送りしてきた腹部エコー検査所見の「腎臓編」
も、そろそろ終わりを迎える時がまいりました。

 すぐにでも治療が必要となる腎疾患や、健康診断の結果判定の際、私ども医師
が絶対に見落としてはいけない重要な腎臓の所見につきましては、これでほぼ網
羅したと思います。

 あとは、先天的な腎臓の形態異常として有名な所見を2つご紹介し、腎臓編の
エピローグといたしましょう。


H重複腎盂:
 第145回の当コラムでも触れた「腎盂(じんう)」という部位が、今回は再
び登場です。
 まずは復習となりますが、腎臓内にある腎盂は、腎臓で生成された尿を一時的
に貯留しておく場所で、腎盂と膀胱をつなぐパイプとしての役割を持つ「尿管」
を介し、適宜、膀胱内へ尿を送り出します。

 膀胱は腎臓よりはるか下方に位置しており、そのため腎盂から下向きに出てい
る尿管は、通常ならば左右の腎臓にそれぞれ1本ずつしかありません。また、当
然ですが、腎盂も本来は1個の腎臓に1つずつしか存在しない部位です。

しかし、それら尿管と腎盂のセットが1つの腎臓に2セット存在していることが
時々あり、この状態を「重複腎盂」(または重複腎盂尿管)と呼びます。

 重複腎盂は先天的なもので、腎臓の先天性奇形の中では最も多く見られます。
およそ20〜30人に1人の割合で認められることが知られていて、これは意外な
ほど高率だと言えるでしょう。男女比は1:3で女性に多く、無症状のまま経過
している場合は人間ドックや健康診断の腹部エコー検査などで偶然発見されるこ
とがほとんどのようです。

 上記のように、無症状のまま一生をつつがなく過ごすケースが多いので、もし
発見されたとしても基本的に治療は必要ありません。ただし、重複腎盂には「不
完全型重複腎盂」と「完全型重複腎盂」とがあり、そのいずれかによって治療を
要する場合も出てきます。

 不完全型重複腎盂とは、1個の腎臓の中にある2セットの腎盂と尿管のうち、そ
れぞれの腎盂から出た2本の尿管が膀胱に向かう途中で合流して、「Y字」のよう
な形態になっているものです。これは、膀胱に入る尿管が結局は1本だけになり、
尿の流れがスムーズにいくため、ほとんどの場合治療の必要はありません。

 しかし、もう一方の完全型重複腎盂は、2本の尿管が途中で合流せず、2本とも
膀胱に入ってしまうタイプで、こちらは膀胱尿管逆流症などを起こしやすく、そ
の結果尿路感染症を繰り返したりするため、必要なら幼児期に手術などの治療を
受ける場合があります。

また、完全型では、1本の尿管が子宮など膀胱以外の場所につながっているケー
スもあり(これを『尿管異所開口』といいます)、この場合も多くは手術が必要
となるでしょう。


I馬蹄腎:
 最後は馬蹄腎(または馬蹄鉄腎)のお話でおしまいです。
 
 これも腎臓の先天的な形態異常で、本来は左右に離れて独立した状態で存在す
るはずの腎臓が、胎生期に右腎の下部と左腎の下部が癒合してしまうことにより、
まるで馬の蹄鉄(ていてつ)のような形になってしまう現象を指します。

 馬の蹄を保護するための金具である蹄鉄が「U字型」をしていることは、皆様
ご存知のことでしょう。

 腹部エコー検査を行うと、まさしく腎臓がU字型(正確に表現すると『逆U字型』)
に描出されるため、馬蹄腎はすぐに発見出来る疾患として有名なのです。

 発生する頻度としては、約2000人に1人くらいの割合ですが、ターナー症
候群といった染色体異常症のある方に合併する率がかなり高いことでも知られて
います。

 まったく無症状で経過する方も多い反面、子供のうちに何かしらの症状が出る
方や、成長後に腎結石、水腎症、尿路感染症などの合併症を頻繁に起こす方もい
るため、その場合は癒合した腎臓を左右に切り離す手術を行うこともあります。

 いずれにせよ、症状が出現してからその対策を考えることが出来る疾患ですの
で、馬蹄腎という診断が付いた方でもあまり心配せず、どうぞ普段通りの生活を
お送り下さい。





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