今号は、大腸がんのお話の第2回目です。
①大腸の構造と役割
消化管という臓器は、口から肛門まで続く1本のトンネルであり、摂取した食物
の消化および吸収と、不要物の排泄を担当する器官です。
全長が2メートルほどの大腸は消化管の最後の部分に位置していて、大きく分け
ると盲腸・結腸(上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)・直腸・肛門から成
り立っていますが、その主な役割は腸管を通っていく内容物から水分を吸収するこ
とにあります。
私たちの口から摂取された食物は、小腸で栄養分が吸収されて残りかすとなり、
そのあと大腸に液状のまま流れ込むと、大腸壁から水分が吸収されて徐々に固形化
し、最終的には肛門から便として排泄されるという仕組みになっているのです。
②大腸がんが発生する理由
大腸がんには、大きく分けて2種類の発症機序があると考えられています。
ひとつは、大腸粘膜に発生する良性の隆起であるポリープ(腺腫)が、何らかの
原因でがん化した場合。
もうひとつは、まったく正常の大腸粘膜から直接がんが発生する場合です。
いずれの場合も、なぜがん化するのかという詳しいことまでは解っていませんが、
がんを誘発しやすい要因、いわゆる危険因子についてはいくつもの報告があります。
たとえば、最も有名なものは「食生活の欧米化」です。
これは、我が国で赤肉(牛や豚や羊の肉など)およびハムやソーセージといった
加工肉が多く食べられるようになり、それを消化するために分泌される多量の胆汁
酸が腸の中で発がん性物質になるという考え方で、大腸がんが近年になり日本で急
激に増加した理由として、最も有力な説だと捉えられています。
そして、高齢化社会も大きな要因のひとつに挙げられるでしょう。
加齢は、すべてのがん発症の危険因子といえるからです。
また逆に、大腸がん家系に生まれた方は元々リスクが高いのですから、若い頃か
ら大腸の検査を定期的にお受けいただく必要があります。
その他、過度の飲酒、喫煙、肥満などの生活習慣に関わることや、家族性大腸腺
腫症(家族性大腸ポリポーシス)といった遺伝性疾患、長期間罹患している潰瘍性
大腸炎なども、大腸がん発症の危険因子として知られています。
③大腸がんの症状
多くのがんに共通していることですが、大腸がんの場合も早期には症状がほとん
どありません。
このため、健康診断や人間ドックなどの便潜血反応検査で発見されることが多い
のです。
大腸がんは進行するにつれ、血便、下血、便通の異常(下痢と便秘を繰り返す)、
残便感(排便しても便が残っている感じ)、便が細くなるといった症状や、腹痛、
腹部膨満感、腹部での腫瘤触知、体重減少、貧血などが出現しますが、がんの出来
る部位によってそれぞれ症状は違ってきます。
特に、好発部位として知られる直腸とS状結腸のうち、より肛門に近い部位であ
る直腸にがんが出来た場合は、比較的早くから出血が認められることも多いので、
早期発見の絶好のチャンスとなります。
しかし、痔核をお持ちの方の場合、「いつもの痔からの出血だろう」と自己判断
をしてがんを見逃してしまうこともあり、くれぐれも注意が必要です。
次回は、大腸がんの検査法や治療法などにつきご説明いたしましょう。
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