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■ 第137回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その95〜

医師 小澁 陽司
     

 さて今回は、腎結石および尿管結石シリーズの最終話です。

 前号において、腎臓の中で形成された結石は腎臓内で動かない限り、なかなか症
状を現さないとご説明しました。

 この現象は「サイレントストーン(沈黙の石)」と呼ばれ、もし症状が出たとし
てもせいぜい背中の鈍痛くらいしかない腎結石の特徴を上手く表現していますが、
その腎結石が何らかの原因で腎臓内から尿管へ転がり落ちて尿管結石になってしま
うと、様相はいきなり一変します。

 勿論、尿管結石のすべてに激烈な症状が出るわけではありません。
 結石が小さい場合などは、尿の流れに乗ってそのまま尿道口まで達し、ご本人も
気付かぬまま尿とともに排泄されてしまうケースもあります。

 しかし、一定以上の大きさの結石は当然のように細い尿管内で引っ掛かり、その
場所を中心とした猛烈な痛みを惹起します。
 これが「疝痛発作(せんつうほっさ)」と呼ばれる、尿管結石の代名詞と言うべ
き痛みの発作なのです。

 第135回の当コラムに綴った、筆者の高校時代の出来事を思い出してください。
 普段から水分をあまり摂らずに過ごしていた英語塾の先生に、突然起こった左の
背中と腰の激痛。
 そして、落ち着きなく体を動かし続ける様子は、まさしく尿管結石の疝痛発作に
他なりません。

 実はこのエピソードの中には、尿管結石の発症に関するキーワードが満載なので
す。
 まず、夏場に脱水状態が続くと体内で血液が濃縮され、結石のもとが腎臓内で作
られやすくなります。
 そして、脱水状態では尿も少ないため尿管が細く狭くなり、そこへ腎結石が転が
り落ちると、たやすく尿管の途中で引っ掛かってしまうわけです。
 さらに、尿管が結石によって閉塞され、腎臓で作られ続ける尿が膀胱へ流れ落ち
ようとしてもそこを通過することができず、尿管は逃げ場のない尿のせいで大きく
膨らみ続け、ついには腎臓まで膨張させてしまいます。
 この状態を「水腎症」と言い、疝痛の原因のひとつとなるのです。

 また、日本における尿管結石の発症率上昇の原因のひとつには、食生活の欧米化
があると考えられています。
 アメリカで長く生活されていたこの英語の先生の日常の食事が、アメリカナイズ
されていたことは想像に難くありません。
 つまり先生には、あらゆる点で尿管結石を発症させる条件が整っていたというこ
とになるわけです。

 その他、尿管結石の症状としては血尿や、痛みに伴う吐き気・嘔吐などが知られ
ており、また、結石が膀胱や尿道まで落ちてきてそこに詰まると、尿を排泄できな
くなったり膀胱炎や腎盂腎炎を起こすことがあるため、尿管結石が疑われた際はす
ぐに泌尿器科や内科といった医療機関への受診が必要になります。
 結石の検査に用いられるのは、腹部エコー検査、腹部レントゲン検査、尿路造影
検査、CT検査、尿検査などで、それらを組み合わせて診断を付けていきます。
 その中でも特に腹部エコーは、身体への放射線被爆がなく簡便に検査できるため、
きわめて有用な検査法であると言えるでしょう。

 それではこの三部作を、腎結石と尿管結石の治療法のご説明で終えたいと思いま
す。

 現在、腎結石の治療法で最もポピュラーなのが、ESWL(体外衝撃波結石破砕術)
という方法です。
 これは、特殊な装置を用いて体の外側から結石に向かい衝撃波を集中的に当て、
体内で結石を粉々に破壊するというもので、患者さんの体に大きな負担を掛けない
で治療できる特徴があります。

 次に、TUL(経尿道的尿管結石除去術)とPNL(経皮的腎結石除去術)といった、
結石を直接除去してしまう手術もよく行われます。
 TULは、尿道から内視鏡を挿入して結石を摘出する方法で、ESWLと違って直接結
石を見ながら確実に治療することが可能です。

 また、PNLは背中に穴を開けて内視鏡を入れ、腎臓からダイレクトに結石を除去
する方法であるため、体には最も負担が掛かる手術ですが、他の治療法では除去で
きない大きな結石(サンゴ状結石などと呼ばれるもの)も取り出すことが可能であ
るという利点があります。

 比較的小さな尿管結石ならば、外来で点滴を行いながら結石が落ちるのを待てば
よいのですが、石が大きい場合にはこれらの方法を用いて治療を進めていくのです。

 再発しやすいことが知られている腎結石や尿管結石。
 その予防には、結石のもとになる食品の偏食を控えるといった正しい食生活を送
ることに加え、とにかく水分をよく摂ることが重要であることを、このコラムをお
読みになられた皆様はどうぞお忘れにならないでください。



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