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■ 第136回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その94〜

医師 小澁 陽司
     

 今号は前回に引き続き、腎結石と尿管結石のお話です。

 若き日の筆者の体験を綴った前号のエピソードは、腎結石および尿管結石に関す
るいくつもの重要なキーワードを含んでいました。

 それらのキーワードを織り交ぜつつ、今号と次号でさらに詳しくご説明をしたい
と思います。

 まず、それぞれの結石について解説する前に、皆様には「尿路」と呼ばれる器官
の概念をご理解いただかなくてはなりません。

 尿路とは泌尿器の一部であり、腎臓で尿が作られて体の外に排泄されてゆく経路
のことを意味します。

 すなわち、腎臓、尿管、膀胱、尿道の4つの部分で構成されている一方通行の水
道管のようなもので、その流れについてもう少し詳しくお話しすると、まず腎臓で
作られた尿は、左右それぞれの腎臓から出ている尿管という2本の細い管を通って
膀胱へ流入します。

 そして、膀胱で一旦溜められた尿はそこから1本だけ出ている尿道を経て、(男
女それぞれ形態は違いますが)体の外へと排泄されるシステムになっているのです。

 臨床的には、腎臓と尿管までを上部尿路、膀胱および尿道を下部尿路と区別して
いますが、いずれの部位にせよ、尿路に発生する結石はすべて「尿路結石」と呼ば
れるわけです。

 ここでもうお気付きの方もいらっしゃるとは思いますが、このうち、上部尿路に
発生する結石こそ、今回のテーマである腎結石と尿管結石であり、それら2つが日
本人に発症する尿路結石のほとんどを占めているため、皆様も普段からよくお耳に
されるほど馴染み深い病名になっているのだと思います。

 それでは、皆様はその2つの結石の明快な違いまでご存知でしょうか?

 やや専門的になりますが、腎結石がどうやって形成されていくかについて、先に
触れておきましょう。

 腎臓の働きで最も重要なことは、腎臓を通過していく血液を濾過し、人体にとっ
て不要な老廃物や過剰な水分を体外に捨てるために尿を生成するという機能です。

 濾過装置である腎臓を血液が通ると、不要になった血中のカルシウム、蓚酸(しゅ
うさん)、リン酸などの物質は尿の中に捨てられるのですが、それらが過剰に血液
の中にある場合、カルシウムを中心とした結合物を形成して腎臓内に集積し、徐々
に結晶化していくことによりついには腎結石になってしまいます。

 このため、腎結石の大部分は、「蓚酸カルシウム結石」や「リン酸カルシウム結
石」と呼ばれる種類の石となるのです。

 また他にも、痛風の原因となる尿酸が結晶化して腎臓に蓄積し、「尿酸結石」と
なる場合や、アミノ酸の一種であるシスチンという物質が尿中に捨てられることに
より、「シスチン結石」を形成することも知られています。

 さて、それでは腎結石と尿管結石の差は一体どこにあるのでしょうか。

 実は腎結石も尿管結石も、元はまったく同じものなのです。意外でしょう?

 その大きな違いを簡単に説明すると、腎結石は腎臓の中で石の塊として形成され
たまま動かない状態であり、一方の尿管結石は、その腎結石がなにかの拍子で腎臓
から尿管内へぽろりと落ちてしまった、というだけの差しかありません。

 しかし、たったそれだけの差とはいえ、両者のあまりの症状の違いを、前回ご紹
介した筆者の英語の先生のように尿管結石をご経験された方は、身に沁みて分かる
ことになるのです。

 次回、腎結石と尿管結石の症状の違いや診断法、治療法など、いよいよ3部作の
最終話をお届けしましょう。



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