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■ 第131回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その91〜

医師 小澁 陽司
     
 3か月にわたって解説して参りました腎臓がんですが、今回が最終回となります。
 それでは、早期発見のために最も重要な検査法についてのお話から始めましょう。

 腎臓は尿を産生する場所ですので、当然、尿検査において血尿の有無、そしてが
ん細胞の有無を調べることが診断の手がかりとなる場合もあります。しかし現在、
腎臓がんを早期発見するための主役は、何よりもまず腹部エコー検査なのです。
 近年、人間ドックや健診で偶然に腎臓がんが発見されるケースが増加したのは、
人体への負担がなく最も容易に腎臓がんのスクリーニング検査を行うことのできる、
この腹部エコー検査の普及に負うところがきわめて大きいといえるでしょう。
 やや専門的な話になりますが、腹部エコー検査上、腎臓がんの内部はその進行程
度によって、低エコー(黒く写る状態)から高エコー(白く写る状態)まで様々な
所見を示します。また、以前の当コラムで肝細胞がんのご説明をした時にも登場し
た、「ハロー(halo=辺縁低エコー帯)」と呼ばれる所見を腎臓がんも呈する
ことがあり、それらの総合的な観察の結果、腎臓に出来る他の疾患との鑑別を行う
のです。
 そして腹部エコーで腎臓にがんを疑わせる腫瘤が認められた場合、さらに腹部C
T検査やMRI検査を行い、それが腎臓がんであるという確定診断を付けていきま
す。 
 今、確定診断を行うのに最も有用な検査法は「腹部ダイナミックCT検査」であ
り、腎臓がんはこの検査のおかげで、臓器から直接細胞を採取して組織診断する方
法(生検と呼ばれます)を行わずに診断が付けられるようになったのです。
 また、もしもがんが進行していて他臓器への遠隔転移が疑われたならば、胸部レ
ントゲン検査や胸部CT検査、頭部のCTおよびMRI検査、骨シンチグラフィな
どの検査も併せて行います。

 最後は、腎臓がんの治療法について。
 腎臓がんに対する第一選択の治療法は外科手術です。腎臓がんは、肺がんなどと
違って化学療法や放射線療法が有効ではないため、他臓器への転移のない場合は根
治療法として積極的に手術が行われます。手術方法としては、がんの進行状況に応
じて、がんを部分的に腎臓から切除する場合と、腎臓を丸ごと摘除する場合に大別
されますが、腎臓は体内に二つ存在する臓器ですので、一つを摘出しても人体的に
はあまり問題になりません。
 また最近では、大きく開腹する手術法だけではなく、お腹に開けた小さな穴から
内視鏡を挿入して行う手術(腹腔鏡下手術)も普及してきました。最新の手術法と
しては、医師が内視鏡の画像を見ながら機械を遠隔操作してがんを摘除する、「ロ
ボット手術」も全国の医療機関に導入されはじめており、今後の発展が期待されて
います。
 そして、手術療法を支援する目的や、他臓器への遠隔転移がある場合に行われる
のが、薬物療法です。薬物療法には、人体内の免疫力を増強させるサイトカイン
(インターフェロンなど)という薬剤を使用して行う「免疫療法」と、がんを増殖
させる細胞内の特定の分子のみを標的にして薬剤で攻撃を行う「分子標的療法」が
あり、それぞれ効果を上げています。

 現在、すべての悪性腫瘍のわずか2〜3%を占めるのみの腎臓がんですが、今後、
女性が罹患するがん全体のうち、腎細胞がんが最も右肩上がりで増加していくであ
ろうという予測もあり、近い将来には決して地味な存在ではなくなると考えられて
います。
 昔から、「肝腎要(かんじんかなめ)」と言われるように、体内の臓器の中でも
特に重要な役割を持つ腎臓。
 人間ドックや健診といった機会を上手に利用して、1年に1回は腹部エコー検査
をお受けいただき、この寡黙ながらも大切な臓器をがんの魔の手から是非守ってあ
げてください。


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