kenkou_bunner.gif
■ 第129回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その89〜

医師 小澁 陽司
     
 今回から、本コラムは再び腹部エコー検査所見のお話に戻ります。肝臓の話題
は前回で終わり、これから数回にわたって解説させていただくテーマは、肝臓と
並んで大切な臓器である「腎臓」にいたしましょう。
 腎臓にまつわる基礎知識や腎疾患の数々を、腹部エコー所見と共に分かりやす
くご説明していきたいと思います。

 まず、そもそも腎臓とは人間の体のどこに存在し、どのような働きをしている
のでしょうか?
 ソラマメのような形をした腎臓は、腰の少し上の高さで背骨を挟み、体の右側
と左側に1個ずつ存在しています。
 1個がわずか150グラムほどしかないこの腎臓には、いくつもの重要な働きが
あります。特に重要なのは、全身の血液から不必要な物質を取り除いて血を浄化
するのと同時に、その不必要なもの(老廃物や毒素など)を尿の中に捨て、体外
に排泄するという役割。いわば、血液のフィルターとしての機能を果たしていま
す。
 また、産生する尿量を調節し、体内の水分のバランスを一定に保つことも腎臓
の大切な仕事です。腎臓の機能が悪くなって尿が作られなくなると、体内に老廃
物や毒素が蓄積し、最終的には腎不全になり人工透析が必要となる事態に至るた
め、健診などで血中クレアチニン高値や尿蛋白陽性といった腎機能障害(近年は、
『慢性腎臓病=CKD』という呼称が一般的になっています)を指摘された方は、
定期的に医療機関を受診し、腎機能を悪化させないように努めることが大事でし
ょう。
 そして、生命維持に必要な各種のホルモンを産生することも、腎臓の重要な役
割のひとつです。腎臓から分泌される主なホルモンとしては、血圧調節に関与す
るレニンやプロスタグランジン、赤血球の産生に関わるエリスロポエチンなどが
あり、さらに骨の強度を保つ機能にも関係しています。このため、腎機能障害が
起きるとこれらのホルモン分泌能が低下し、高血圧(腎性高血圧)や貧血(腎性
貧血)などが惹起されることから、腎機能を守るため、日頃より塩分を摂り過ぎ
ないよう心掛けてください。
                       
@腎腫瘍(腎臓がん)
 腎臓がんの数は、近年増加し続けています。胃がんや肺がんなどのメジャーな
悪性腫瘍と比較すると、我が国での腎臓がんの罹患率は人口10万人に対し毎年
10人前後とかなり低く、そのためか、日頃から腎臓がんについて積極的に心配
される方はあまり多くないという印象を受けますが、統計上、我が国で腎臓がん
の患者数が着々と増えているのは間違いありません。
 その原因として、近年、健康診断や人間ドックにおける検査の精度が高くなり、
偶然発見される腎臓がんの症例が多くなったことや、腎疾患とは違う別の病気に
ついて全身の精密検査をしている際に、たまたま発見されるケースが増えたとい
うことが指摘されています。
 翻って考えてみると、腎臓がんの認知度がさほど高くない理由は、早期の腎臓
がんに派手な自覚症状がほとんどなく、切迫した状況で医療機関を受診される患
者さんが少ないため、各種のメディアから発信されるせっかくの啓蒙情報に注目
が集まりにくいという事情もあるような気がします。

 次号からは、腎臓がんの詳細なご説明に入りましょう。


(C)2000 The Soka Chamber of Commerce & Industry. All rights reserved.
E-mail:
sokacci@sokacity.or.jp
バックナンバー