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■ 第126回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その88〜

医師 小澁 陽司
     
 肝臓のエコー検査所見において、比較的頻繁に認められる「肝内石灰化」。
そして、名称から受ける印象としてはそれにやや似ているものの、全く違う対応
が必要となる「肝内結石」。
 今回は、肝臓内にできる石灰化と結石の両者を比較していきたいと思います。


D肝内石灰化:まず初めに、石灰化という言葉のご説明をいたしましょう。

 石灰化とは、きわめて単純に言うと「ある組織にカルシウム(石灰)が沈着した
状態」のことで、体の色々な部分に起こります。有名なものでは、乳腺石灰化や腎
石灰化などがあり、このほか胸部レントゲン写真でよく見られる所見として、大動
脈石灰化や肺(肺野)の石灰化があります。
 乳腺石灰化のように、乳がんの存在を示唆してくれるため精査が必要なものから、
放置してしまっても構わないケースが多い肺野の石灰化(第87回の当コラムをご
参照ください)まで、石灰化の持つ臨床的な意味は様々ですが、私ども医療関係者
がこの所見を目にした時、乳腺などの例外を除き、概ね大きな問題はないと考える
のが普通です。肝臓の中にカルシウムが沈着してできる肝内石灰化もその例に漏れ
ず、ほとんどの場合、健康状態に全く影響はないと考えていいでしょう。
 腹部エコー所見上、白く写ることが特徴の肝内石灰化は、かつて肝臓に炎症が起
きたり、出血があったり、寄生虫や細菌が感染して治癒したあとなどに出現すると
言われています。つまり、健診やドック結果で肝内石灰化という所見を指摘されて
も、その時点で明らかな病的意義はなく、慌てて外来を受診する必要などはありま
せん。


E肝内結石:一方の肝内結石は、肝内石灰化と較べて病的意義の大きい所見です。

 肝臓で産生された胆汁(消化液)は、肝臓の中の胆管というダクトを通って十二
指腸に流れ込み、胃から運ばれてきた食物とそこで混ざりあって、腸管内における
脂肪の消化と吸収の手助けをします。この胆管のうち、肝臓内にある胆管を肝内胆
管、肝臓から外に出て十二指腸につながるまでの胆管を肝外胆管と呼んで区別して
いますが、肝内胆管内に石が出来てしまう状態を肝内結石、そして、それが原因で
起きる疾患を「肝内結石症」と呼んでいます。
 肝内胆管内に結石ができると、胆汁の流れが阻害されることにより、その付近の
胆管炎が繰り返し起こったり、敗血症といった重症感染症の原因になるばかりでは
なく、長期間の経過を経て肝硬変や肝不全の状態に至り、さらには肝内胆管がんを
合併することもあるため、十分な注意が必要です。
 また、症状がある場合は外科的に結石を摘出する治療も行われますが、よく知ら
れている「胆嚢結石症」と違い、肝内結石症は石を取っても再発を繰り返すことで
知られ、このため厚生労働省によって難治性疾患のひとつとして扱われており、前
項の肝内石灰化と一線を画していることは明白でしょう。
 近年、衛生面の改善や食生活の変化からか、我が国における肝内結石症の症例数
は減ってきているものの、先述のような不幸な経過をたどらないためにも、肝内結
石症と確定診断された場合は、腹部エコー検査による定期的な経過観察が必要とな
ります。


 石灰化も結石も、同じカルシウム成分から成り立っているとはいえ、予後がこん
なにも違うというのは驚きですね。


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