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■ 第124回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その86〜

医師 小澁 陽司
     
B肝がん:石原裕次郎さん、島倉千代子さん、緒形拳さん、菅原文太さん。
 我が国の芸能史を彩るこれら綺羅星の如き方々を襲い、残念ながら不幸な
転帰をとるに至らしめた疾患が「肝がん」です。

 もう少し詳しく申し上げると、石原さん、島倉さん、緒形さんは原発性肝
がんで、菅原さんは転移性肝がんであったことが伝えられています。
 また、昨年の1月に腹腔鏡手術をお受けになった女優の川島なお美さんは、
ご自身の病名が肝がんの一種である胆管細胞がんであることを公表されまし
た。
 このように、肝がんと一口に言っても、その中にはいくつかのバリエーシ
ョンが存在します。今回は、肝臓の悪性腫瘍を代表するこの肝がんの分類や
それぞれの特徴などについて解説いたしましょう。

 まず肝がんは、肝臓そのものから発生する「原発性肝がん」、そして体の
他の部分に発生したがんが肝臓に転移して発症する「転移性肝がん」の二つ
に大きく分けられます。
 前号でご説明した腫瘍の分類法において、悪性の上皮性腫瘍に属する原発
性肝がんは、さらに「肝細胞がん」と「胆管細胞がん」に大別されますが、
我が国における原発性肝がんの約90%以上を肝細胞がんが占めており、肝
がん=肝細胞がんと定義されているのが実情です。
 この肝細胞がんを惹起する最大の原因となる疾患が、肝炎ウイルスの長期
的な持続感染であることはまだまだ一般的に知られておりません。肝細胞が
ん全体の約70%はC型肝炎ウイルス、約20%がB型肝炎ウイルスの持続感
染によって起こりますが、これらのウイルスが長期間にわたって肝臓に感染
し続けると慢性肝炎となり、やがて肝硬変へ進展し、ついには肝臓がんにな
ると考えられています。つまり、肝細胞がんの発症を予防するためには、ご
自分の体に肝炎ウイルスがいるかいないかの検査を受けることや、もし感染
していた場合には速やかに治療を行うことが重要なのです。

 ちなみに、肝細胞がんの腹部エコー検査上、最も有名なものは「ハロー
(halo=辺縁低エコー帯)」と呼ばれる所見で、がんの周囲に薄い帯状
の層が観察できるという特徴があります。あとでご説明しますが、この層の
厚さの違いにより、転移性肝がんとの鑑別を行います。
 また、川島なお美さんが手術をお受けになった胆管細胞がんは、別名を肝
内胆管がんといい、わずか5%前後とはいえ原発性肝がんのひとつに挙げら
れます。肝臓で作られる胆汁の通り道は胆管ですが、そのうち肝臓内を通っ
ている胆管に出来るがんだけをそう呼んでいます。

 一方、原発性肝がんと対をなすのが転移性肝がんです。これは、大腸がん、
胃がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、子宮がんなどが血液の流れに乗って肝
臓に遠隔転移するもので、驚くべきことに原発性肝がんと比べ、はるかに発
生数が多いことで知られています(約20倍以上)。
 肝臓は血液を濾過してきれいにする役割を持つ臓器であるため、全身のほ
とんどの血液が流入してきます。つまり、他の臓器に出来たがんが進行し、
血液中へがん細胞が侵入した場合、濾過装置のフィルターにあたる肝臓で引
っかかりそのまま増殖してしまうことから、必然的に発生率が高くなってし
まうわけです。

 この転移性肝がんのエコー上の特徴的所見は、先述した原発性肝がんのハ
ローと比較して、がんの周囲に出来る帯状の層が厚いということです。こち
らは「ブルズアイサイン(bull's eye sign=雄牛の目)」と
呼ばれ、原発性肝がんとの重要な鑑別点になっています。


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