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■ 第122回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その84〜

医師 小澁 陽司
     
 今回は、前号で「脂肪肝」をご説明した際、スペースの都合上書けなかっ
たことの補足をいたしましょう。

 腹部エコー所見上、脂肪肝の進行程度を分類すると一般的に「高度」、
「中等度」、「軽度」になることはすでにご説明しました。皆様の健康診断
やドックの結果用紙にそれらの分類が明記されている場合、それぞれどのよ
うに対応すればよいかを簡単に記してみますと、まず脂肪肝が軽度の時は、
普段の食生活に若干注意する程度で結構です(もちろん、油断は禁物ですが)。
しかし中等度の場合には、外来受診の必要性まではないとはいえ、食事療法
と運動療法の併用という「自主的な治療」を行わなければなりません。もし、
ご自分お一人では自信がないという方は、内科外来で医師に相談しながら努
力されるのもよいでしょう。さらに、脂肪肝が高度である場合には食事療法
と運動療法のほか、場合によっては薬物治療も加え、医師の指導のもとでそ
れらを厳格に行うことが理想的です。

 なぜなら、前号でも触れたように、高度の脂肪肝を放置しておくと「脂肪
性肝炎」と呼ばれる状態へと進行し、やがて肝硬変から肝細胞がんを発症す
ることもあるからなのです。この脂肪性肝炎は原因別に大きく分けて二種類
あり、ひとつはアルコールを常習的に多飲される方に起こる「アルコール性
脂肪性肝炎(ASH)」。そしてもうひとつが、アルコールは飲まないものの、
肥満や糖尿病や脂質異常症などのある方に起こる「非アルコール性脂肪性肝
炎(NASH)」です。

 ASHはアルコール多飲との関連性が強いため、節酒や禁酒によって肝臓の
状態が改善するのは容易に理解できると思いますが、生活習慣病を発症され
る方々が多くなってきている昨今、それに伴い増加傾向にあるNASHのほうが、
今やASHよりむしろ一層の注意を要するかもしれません。現在、我が国には
NASHであると考えられる方が約100万人もおり、今後さらに増加すること
が見込まれています。これからの我が国にとって、生活習慣病の予防や肥満
の改善などが必要なのは自明の理といえるでしょう。

 また、今回補足したい脂肪肝に関連する所見がもうひとつあります。これ
は、先述した脂肪肝の分類とはまたちょっと違うカテゴリーのもので、最近
わりとよく目にするようになった「不規則(あるいは不均一)脂肪肝」とい
う所見です。これにはさらに別名が存在し、「まだら脂肪肝」や「限局性脂
肪肝」などと記載する場合もありますが、概ね同じような所見を指している
と考えてください。

 一般的な呼称としてのいわゆる「脂肪肝」が、肝臓全体にまんべんなく脂
肪沈着が認められる(これを『びまん性脂肪沈着』と呼びます)状態である
のに対し、不規則脂肪肝とは、肝臓内の限局した部分のみに脂肪が沈着して
いる状態を意味します。つまり、脂肪の沈着する場所が不規則的であったり、
不均一であったり、まだら状(地図状)になっていたりすることから、この
ように多様な名称で呼ばれるようになったわけです。

 腹部エコー検査において、不規則脂肪肝が重要視されるようになったのは
理由があります。それは、時により不規則脂肪肝の所見が「肝腫瘍の陰影」
に見えるため、鑑別を付けなければならないから。疑わしい場合は、腹部CT
検査などをお受けいただき、決着を付けることになります。


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