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■ 第121回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その83〜

医師 小澁 陽司
     
 健康診断の結果において、真っ先に肝機能が気になる方は多いでしょう。
確かにAST(GOT)やALT(GPT)、γ- GTなどの肝機能の数値が上昇している
方は、健診の有所見者全体の中でもかなり多数にのぼり、その方々の中には
ご自分の生活習慣について、やや後ろめたい気持ちをお持ちになっている方
も多いのではないかと思います。事実、肝臓と生活習慣病が密接な関係にあ
ることは、一般常識として最近広く知られてまいりました。例えば、皆様ご
存知のメタボ、つまり「メタボリックシンドローム」は、お酒の飲みすぎや
食べ過ぎなどといった生活習慣の乱れにより肝機能障害が起こり、肝臓で正
常に行われていた脂肪などの代謝が出来なくなった結果、脂質異常症となっ
て内臓脂肪が蓄積し、やがて動脈硬化が進行してしまうことが一因として挙
げられています。しかし、これだけ怖い状態であるにもかかわらず、肝機能
障害は明らかな身体症状が出現しないため、理屈では解っていてもなんとな
く放置してしまう傾向があり、気がつくと体が蝕まれている…。残念ながら、
これが現在の我が国でよく見受けられる状況なのです。そういった事態を避
けるため、肝機能障害は放置せずに精密検査をお受けいただいたり、生活習
慣の改善を実践しなければなりません。

 この肝機能障害を健診で指摘された場合、精密検査(二次検査)としてほ
とんどの医療機関で腹部エコー検査が選択されますが、外来など臨床の現場
において、今やエコー検査はなくてはならないものになっています。ぜひ日
頃から気軽にこの検査をお受けになり、皆様の病気の早期発見・早期治療を
実現させていただくことを願いつつ、そろそろ腹部エコー検査の所見のご説
明をはじめましょう。

 最初のテーマは「肝臓」です。


@脂肪肝:まずは皆様に最も馴染み深いと思われる、この所見から。

 肝臓という臓器には、実に色々な役割があります。その代表的なものとし
ては、まず、体にとって有害となる物質を分解し、毒性をなくす「解毒作用」。
いわゆる毒物のみならず、治療薬やアルコールも肝臓で分解され、無害なも
のに変えられてから体外に排泄されます。続いて、食事によって体内に入っ
てきた栄養(蛋白質、脂質、糖質)を、各臓器が利用できるような状態に調
整したり、エネルギーとしていつでも使えるように貯蔵する「代謝作用」。
そして、口から入ってきた蛋白質や脂質を分解しやすくし、腸管内での消化
と吸収を助ける「胆汁」という液体の産生などが挙げられるでしょう。

 これらの作用は当然、食生活の乱れに影響を受けるのですが、その中でも
アルコールは肝臓で分解され中性脂肪として合成されるため、大量飲酒を続
けている場合には肝細胞内に脂肪が蓄積してしまいます。この状態が「アル
コール性脂肪肝」と呼ばれ、そのまま多飲を続けていると肝細胞が障害され
てアルコールの分解能力が落ち、解毒が追いつかなくなるためさらに悪循環
に陥ります。一方、食べ過ぎによる肥満や、糖尿病のために起こる脂肪肝が、
「非アルコール性脂肪肝」です。どちらの場合も、腹部エコー上では肝臓が
白く写ったり、腎臓の色と比べ白黒の差が出来る(これを肝腎コントラスト
と呼びます)ことなどが特徴で、その進行程度によって「高度脂肪肝」、
「中等度脂肪肝」、「軽度脂肪肝」と表現されています。また、脂肪肝は進
行すると脂肪性肝炎、肝硬変、最終的に肝細胞がんに至ることもあり、決し
て侮れない病態であることを忘れてはいけません。

 いずれにせよ、脂肪肝は原因となる状態を是正することが治療に繋がりま
すので、生活習慣の改善が何よりも急務であるといえます。


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