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■ 第112回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その80〜

医師 小澁 陽司
     
 足掛け2年以上の長きにわたり、当コラムにおいて綴ってきた胸部レントゲン写真
の所見のご説明も、今回でいよいよ大詰めを迎えます。
 あとは「心臓」と「骨」の2つの部位を残すのみですので、今号はそれらをご説明
して大団円といたしましょう。

 それではまず、心臓の陰影に関するお話から。

 19心陰影の部分的な突出:このタイトルそのものが、所見名として健診の結果用紙
に記載されるわけではありません。これは便宜上の表現で、実際に記載される場合は
詳細な所見名が付くことになります。
 やや詳しくお話しすると、レントゲン上の心臓の陰影はちょうど雪ダルマのような
形をしており、全体の輪郭が複数のカーブで構成されています。そして、そのカーブ
にはそれぞれ「弓」という名称が付けられていて、さらに上方から順番に数字が振ら
れています。
 例えば、心臓の右側の輪郭の一番上のカーブは「右第1弓」、左側の一番下のカー
ブは「左第4弓」という具合に呼ばれますが、これらのカーブが明らかに外側に張り
出して見える様子を、「右第1弓突出」そして「左第4弓突出」と表現します。
 心陰影が部分的に突出する原因は、心臓弁膜症などの心疾患が主となりますが、そ
の部位に応じて様々な要因があるため、本稿では詳細を割愛します。しかし、いずれ
にせよ精密検査が必要となるものが少なくありませんので、今回はその中から「左第
1弓突出」だけをピックアップしてご説明しておきましょう。左第1弓とは、大動脈
がヘアピンカーブのように曲がっている場所に相当し、その部分の突出は高血圧が長
く続いた状態や動脈硬化、あるいは加齢などが原因となって起こります。健診で指摘
された場合には、心臓エコー検査などをお受けになる必要があるでしょう。

 20心陰影拡大:19と内容が若干リンクいたしますが、この心陰影拡大という所見は、
前項のように心臓を雪ダルマに例えると、その胴体の部分が左右に大きく拡大してい
る状態を指します。いわば、心臓が太って見えるようになったもので、この原因には
心不全、各種の心臓弁膜症、肥満などが挙げられます。精密検査が必要なことも多い
所見です。

 21大動脈蛇行:その名の通り、蛇が移動する時のように胸部大動脈がうねって見え
るもので、加齢に伴う動脈硬化に起因することが多い所見です。したがって、生活習
慣に気を付けていればあまり心配はありませんが、まれに大動脈瘤の存在を示唆する
こともあり、精密検査を考慮する場合もあります。

 22大動脈石灰化:大動脈の壁にカルシウム(石灰)が沈着し、レントゲン上でその
部分が白く写ることをいいます。大動脈蛇行と同じく、やはり加齢性の動脈硬化が主
原因であるため多くの場合心配はありませんが、若年の頃から動脈硬化の進行を抑え
るような生活習慣を心掛けることが大切です。

それでは最後に、骨の陰影に関する代表的な所見をご説明して終幕としましょう。

 23側彎:本来なら、体の中央を上から下までまっすぐに通っている背骨(脊柱)が
左右に彎曲していたり、ねじれたりしている状態を側彎症と呼びます。胸部レントゲ
ン写真で見つけやすい所見のひとつで、軽度のものから強度のものまで様々ですが、
多くの場合原因不明で、それらは特発性側彎症と呼ばれています。
 腰痛などが出る場合や、まったく無症状のまま経過する場合など、症状はケースバ
イケースだと言えるでしょう。また、男性より女性に多く認められるのも特徴のひと
つです。
 もし症状がある場合は、なるべく早く整形外科の専門医を受診されることをお勧め
いたします。

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