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■ 第110回 健康診断を活かす ■
〜糖尿病と脳梗塞 その@〜

医師 小澁 陽司
     
 この4月、悲しい報せを聞きました。

 それは、1990年代にテレビなどで八面六臂の活躍をされ、国民的人気のあった
中国料理界のスターシェフがご逝去されたという報です。
 筆者はかつて、ほんの僅かですがこのシェフと個人的な交流がありました。お会い
するといつも穏やかで裏表がなく、明るく華やかな雰囲気を周囲の人々に振りまいて
いた方だったことをよく憶えています。

 この方が糖尿病を患っていたことなど、筆者は当時まったく知りませんでしたが、
その後、報道で知り得た限りの話を総合すると、糖尿病から脳梗塞を惹起し、最終的
に誤嚥性肺炎を起こされたようです。誤嚥性肺炎はかなり高齢の方に起こりやすいと
いうイメージがあるだけに、まだ70代になられたばかりのこのシェフの病勢の推移
は、にわかに信じがたいお話でした。
 しかし、換言すれば糖尿病という病気が、いかに様々な合併症を引き起こすのかと
いうことを改めて認識せざるを得ない出来事でもあったように思います。

 糖尿病はその名のとおり、糖が尿中に出てしまう病気ですが、その本質は「血糖値
が慢性的に高い状態」が続くことによって、血液中で過剰になった糖が行き場を失い、
仕方なく尿中に捨てられてしまうために起こります。つまり、尿糖が出ないようにす
るには、血糖値を正常に保つようコントロールする必要があるのです。
 血糖値が持続的に高くなってしまう原因のひとつとして、膵臓で作られているイン
スリン(血糖値を下げる作用を持つホルモン)の分泌が低下してしまうということが
あります。このインスリン分泌低下という面から糖尿病を分類すると、大きく2つに
分けられます。まず、自己免疫の関与などにより膵臓の中でインスリンを作る役割を
持つβ細胞が破壊されてしまうため、インスリンそのものを作ることが出来なくなっ
てしまう「1型糖尿病」。そして、食べすぎやお酒の飲みすぎなどといった生活習慣
の乱れによって膵臓が弱り、インスリンを分泌することが出来なくなってしまう「2
型糖尿病」の2つです。

 現在、我が国における糖尿病患者さんの90%以上は2型糖尿病であり、さらにこ
のタイプの方は、肝臓などの臓器においてインスリンに対する反応が悪くなる「イン
スリン抵抗性」が加わるため、ますます高血糖の状態が悪化してしまうことになりま
す。
 このように、体の血管の中を、いわば砂糖水が長期間にわたって流れ続けているこ
とが全身に悪い影響を及ぼすことは火を見るよりも明らかなのですが、巷間よく言わ
れるように初期の糖尿病の自覚症状には特別深刻なものはなく、その陰に隠れながら
じわじわと時間をかけて人体を蝕んでいく、まるで悪魔のような存在だと言えるでし
ょう。
 厳密な血糖値のコントロールが出来ないまま、糖尿病が慢性期の状態に入って10
数年が経過すると、やがて恐ろしい合併症が起こってくることになります。
 それが有名な「糖尿病の3大合併症」と呼ばれるものですが、もちろん合併症はこ
の3つだけではなく、他にも多岐にわたり存在します。

この続きは、また次号にて。

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