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■ 第107回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その79〜

医師 小澁 陽司
     
 今回は、「縦隔」のお話しをします。

 正面から撮影された胸部レントゲン写真を見ると、左右の肺に挟まれたちょう
ど真ん中に、ボウリングのピンのような形をした心臓が存在しています。そして、
体の横から撮影した胸部レントゲン写真を見ると、心臓は前の部分を胸骨という
骨、さらに後ろの部分を背骨に囲まれており、その四方を様々なものに守られな
がら存在していることが分かります。かつて当コラムでも何度か触れましたが、
肺を守ってくれるための鎧(よろい)のような筋骨構造を「胸郭」と呼ぶのに対
し、そのさらに内側で肺や骨が心臓を縦に取り囲んで守ってくれるこの部分は、
「縦隔」と呼ばれています。
 縦隔の中には、心臓の他にも色々な器官が存在し、代表的なものは大動脈、大
静脈、食道、気管、胸線、リンパ節などが挙げられますが、動静脈や食道が通過
する穴を除き、縦隔自体は心臓の下にある横隔膜で蓋をされ、ひとつの独立した
空間を作っているのが特徴です(ちなみに縦隔は、上縦隔と下縦隔に分かれ、そ
の下縦隔はさらに前縦隔・中縦隔・後縦隔と3つの部分に分かれています)。
 このように、縦隔とは胸郭内の最深部であり、なおかつ外界との直接的な接点
がない空間であるため、なんらかの異常が起こっても、臨床的にはそのサインが
目立ちにくいといった難点があり、私たち医師が胸部の画像診断をおこなう際、
より慎重にならざるを得ない部位であると言えます。
 それでは、縦隔の疾患を発見するために注意すべき胸部レントゲン上の代表的
な所見を、次に挙げてまいりましょう。

 N縦隔拡大:先述のとおり、縦隔という場所は、四方すべてが骨に囲まれた強
固な構造物というわけではなく、その左右には柔らかい肺があるだけですので、
レントゲン上、多少縦隔が左や右に拡大している所見があっても、正常所見であ
ることが多いと考えられています。しかし、明らかに大きく拡大している場合に
は、縦隔腫瘍(詳細は後述します)や食道が拡張してしまうアカラシアといった
疾患が疑われるため、それぞれの専門医を受診して精密検査を受ける必要がある
でしょう。

 O縦隔腫瘤影:この所見名は、ずばり縦隔腫瘍の存在を示唆しています。縦隔
内には良性から悪性のものまで、様々な腫瘍が発生しますが、いずれも無症状の
ことが多く、健診などの胸部レントゲン検査で偶然発見されることが多いのです。
代表的なものとしては、胸骨と心臓に挟まれて存在する胸線という臓器から発生
する胸腺腫、大部分が良性である奇形腫(腫瘤の中から、なんと歯が見付かった
りする不思議な腫瘍)や、同じく成人ではほとんどが良性の神経原性腫瘍、血液
中のリンパ球ががん化する悪性リンパ腫などがあり、また発生頻度は高くありま
せんが、胸腺がんなどは予後不良の悪性腫瘍として知られています。

 P縦隔リンパ節腫大:この所見は、前回の当コラムでご説明した「肺門腫大」
の時に考慮すべき疾患とよく似ています。悪性リンパ腫やサルコイドーシスなど
を疑わせるものです。

 Q縦隔リンパ節石灰化:これも上記と同様で、石灰化が顕著な場合は結核など
を疑いますが、心配ないケースのほうが多いと思われます。


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