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■ 第105回 健康診断を活かす ■
〜乳がん治療の最新情報 その2〜

医師 小澁 陽司
     
 C 乳がんの検査法は?
 前回のコラムでも少し触れましたが、乳がんの検査法で日常的に行うことがで
きるのは、ご自身で乳房をチェックしていただく「自己検診法」です。これには
スタンダードな方法がありますが、スペースの都合上ここではご紹介いたしませ
ん。インターネットなどで検索していただければすぐにわかると思いますので、
ぜひ実践されることをお奨めします。
 現在、医療機関で乳がんを検査する場合の一般的な方法は、医師による視触診
に加え、「マンモグラフィー」と「乳腺超音波(エコー)」の2つでしょう。
 マンモグラフィーは乳がん検診の標準的な項目にもなっていますので、会社検
診などでお受けになった方も多いと思います。乳房を強く挟んで圧迫しながらX
線撮影をする検査で、小さな早期の乳がんや石灰化などを見つけるのに有効です。
 ただし、乳腺が発達している若年の方には向いておりません。
 乳腺超音波は、乳腺に出来たしこりが良性か悪性かの見当を付けるのに有用で
す。その結果により、しこりに対し穿刺吸引細胞診(超音波を見ながら細い針で
しこりの中身の細胞を吸い出す検査)を行うことも可能なため、受診者への肉体
的負担が少ないという利点があります。X線を用いないので、若年の方でも安心
してお受けいただける検査です。
 その他、必要に応じてCT検査やMRI検査、PET検査、組織診(少し太め
の針を刺して行う生検)などが行われます。

 D 乳がんの治療は?
 胃がんなどの他のがんと同様、乳がんにも病期分類があり、その進行度によっ
て治療を決定します。治療の基本は外科手術であり、そこに薬物療法(抗がん剤、
ホルモン剤、分子標的治療薬など)、放射線療法などを併用します。外科手術に
おけるがんの摘出範囲は、小さくがんの腫瘤だけをくり抜く場合から、乳房のみ
ならず胸の筋肉やリンパ節まで全部切除する場合まで、病変が発見された時の進
行度で決まりますが、最近はなるべく切り取る範囲を縮小する手術が主流になっ
ています。

 E 遺伝性乳がんとは?
 さて、いよいよここから乳がんの最新情報をお知らせしましょう。
 冒頭に記したように、アンジェリーナ・ジョリーさんは乳がんがまだ発症して
いないのにもかかわらず、左右の乳腺を予防的に切除したのですが、この決断に
は理由がありました。それは、彼女が事前に受けた遺伝子検査の結果、「BRCA1」
という遺伝子に変異があることが判明したのです。このBRCA 1と BRCA2という
遺伝子のどちらかに先天的な変異が見つかった方は、将来乳がんや卵巣がんを発
症する危険性が高く、診断名として「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)」
と呼ばれます。報道によると、ジョリーさんは乳がんを発症する確率が87%、
卵巣がんを発症する確率は50%であると診断され、さらに彼女の母親が卵巣が
んで亡くなっていることを勘案し、今回の手術に踏み切ったのでしょう。確かに、
HBOCによって起こる乳がんの頻度は乳がん全体の5〜10%を占めていて、HBOC
と診断された方が実際に乳がんに罹患する確率は60〜80%にも上るため、乳
房切除をあらかじめ行ってしまうというジョリーさんの選択は間違ってはいない
と思います。ただし、この遺伝子検査を受ける際には、資格を持った遺伝カウン
セラーによるカウンセリングが必須であり、その後の経過観察も必要となるため、
それらの条件が整っている医療機関でなければ実施できない上に、診断後に行う
予防的な手術を含めて保険診療の対象外であるため、相応の費用が掛かるという
事実もあることから、今のところ、誰にでも簡単に受けられる検査や治療ではな
いという現実問題が存在するのです。もし遺伝子の変異があるとわかった方は、
定期検診による入念な経過観察を続けるという選択をされるのも正しい方法であ
ると思われます。
とはいえ、医療の世界は日進月歩です。
 現在、日本乳癌学会がこの検査および治療についての指針を協議中とのことで
すので、近い将来になんらかの進展があることを期待してやみません。

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