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■ 第104回 健康診断を活かす ■
〜乳がん治療の最新情報 その1〜

医師 小澁 陽司
     
 今年も残りわずかとなりました。
 この1年を振り返り、医学界において最も鮮烈であったニュースのひとつは、
本年5月、まだ発症していない乳がんを予防するため、乳房切除術をお受けにな
ったハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんのことでしょう。
 この女優さんが予防的に手術を受けるに至った過程の詳細を筆者に教えてくれ
たのは、筆者の19歳の時からの親友であり、現在も一緒に仕事をしている乳腺
外科専門医です。
 筆者のような内科医にとって、乳腺に発生した悪性腫瘍についての新しい見解
や治療法の詳細を知るというのは、なかなか機会がありません。しかし先日、そ
の親友と話をしている時にジョリーさんのことが話題となり、乳がんにまつわる
様々な最新の話を彼がしてくれたことによって、目の覚めるような思いを持ちま
した。
 そこで今回は、乳腺外科の専門医が教えてくれた最新の知見を含め、乳がんに
関する色々な情報を皆様にお届けしたいと思います。

@乳腺とは?
 女性の左右の乳房の内側には、母乳を作る細胞が密集している「小葉」という
部分と、そこで分泌された母乳を集めて乳頭から外に出す「乳管」というダクト
が備わっています。この2つが「腺葉」と呼ばれる組織を構成し、多数の腺葉が
集まって「乳腺」と総称される部位になるのです。乳房のふくらみは、この乳腺
組織と脂肪組織とが混在することによって成り立っています。

A乳がんとは?
 乳がんは、先に説明した乳腺組織に出来る悪性腫瘍のことで、大部分が乳管か
ら発生します(小葉から発生するのは全体の5〜10%)。
 現在、日本人女性が乳がんに罹患する率は16人に1人と言われており、今や
日本人女性の悪性腫瘍罹患率の1位となってしまいました。この罹患率だけを見
ると欧米人に比べてまだ低いとはいえ、近年はライフスタイルの欧米化などによ
り、日本人でも乳がんが増加傾向にあることが懸念されています。
 また、乳がんは30歳以上の女性で増加し始め、40〜50歳代でピークとな
り、それ以降は徐々に減少していきます。しかし、最近は乳がんによる死亡者数
が上昇傾向にあることなどから、全世代の方において乳房の自己チェックなどの
日常的な注意が必要となることは間違いありません。
 乳がんの症状の主なものは、乳房のしこり、ひきつれたような窪み、疼痛やそ
の部位の発赤・熱感、血性乳汁の分泌(血のような乳汁が出る)、脇の下のリン
パ節腫脹などですので、それらの症状につき、ご自身で定期的にチェックされる
のが理想的です。

B乳がんの発症原因は?
 最新のトピックスについては後述しますが、乳がんの発生およびその増殖に最
も関係が深いと言われているのが、卵巣で作られる女性ホルモンの「エストロゲ
ン」です。現在考えられている乳がん発症のリスクファクター(危険因子)のほ
とんどが、このエストロゲンに関係しており、いうなればエストロゲンが体内に
長い期間分泌されていた方ほど、発症リスクが高くなると考えていいでしょう。
 そのリスクファクターの代表的なものを挙げてみると、月経の開始が早かった
方、閉経が遅かった方、月経周期が短く規則正しい方、初産年齢が高かった方、
出産経験がない方、閉経後に太った方、大量に飲酒をする方、喫煙をする方など
であり、その多くがエストロゲンを長く体内に分泌させるのに寄与するものであ
ることがわかります。
 この続きは次回にいたしましょう。

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