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■ 第102回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その76〜

医師 小澁 陽司
     
 L横隔膜下遊離ガス像:今回解説するこの胸部レントゲン写真の所見は、元
気に健診施設まで歩いてくることの出来るような健診受診者にはほとんど見ら
れない、ちょっと特殊なものです。つまり、この所見は健診で頻繁に見つかる
ようなものではなく、これが認められた時はなんらかの緊急処置が必要である、
というほどの切迫した病的状況を示すサインなのです。
 さて、その正体とは?

 今回と次回の当コラムは、筆者が実際に経験した症例をもとに、ちょっとし
たクイズ形式で説明してまいりましょう。

 その患者はAさん。当時、48歳だった男性です。
 仕事は営業職で、若い頃から仕事一筋の生活を送っており、仕事の延長線上と
しての毎晩の飲酒はもちろん、禁煙の風潮などどこ吹く風でヘビースモーカー
を貫いていました。また、確実に年を重ねてきても体力だけは自慢で、今の若
い人とは違うとばかりに、大食いで脂っこい食べ物が大好きな上に、辛い食べ
物も大好き。仕事上の対人関係などでストレスを抱えても、それをお酒で解消
する日々が続いていました。ただ、最近は仕事のストレスがかなり強くなって
おり、飲酒量と喫煙量が普段よりさらに増えてしまっていることをちょっと心
配しています。
 そんなある日、Aさんはげっぷや胸やけといった自覚症状が出現してきたこ
とに気付きました。しかし、以前も時々同じことがあったし、今回も薬局で売
っている市販の胃腸薬でも飲んでおけば大丈夫。去年受けた健診の胃バリウム
検査の結果には、詳しくは忘れたけど「どこそこの変形」って書いてあっただ
けで、胃がんなんかは出来てないのだから平気だよ!
 Aさんはそう考え、胃腸薬を買って飲んでみましたが、症状は一向に治まる
ことなく、やがてみぞおちに痛みまで出現しはじめました。さらに、背中の痛
みも感じるようになります。しかもこの痛みは、空腹時に強くなるので、そん
な時は無理してでも早めに食事をかっこむように努めると、少し痛みは軽減す
るのでした。

 それではここで問題です。この時点で、Aさんに起こっている病気は何だと
思いますか?

 答えは、これが典型的な「十二指腸潰瘍」の経過なのです。彼の生活習慣は、
いつの間にか十二指腸に潰瘍を作り、そこに加わった強いストレスが潰瘍を急
速に悪化させていったのでした。そしてこのあとAさんを、思ってもみなかっ
た衝撃的な事態が襲います。

 さて、この続きは次回にいたしましょう。

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