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■ 第99回 健康診断を活かす ■
〜風疹最前線2013〜

医師 小澁 陽司
     
 当コラムでは、前回から胸部レントゲン検査所見についての解説を再開したば
かりですが、2013年5月下旬現在、関東圏や関西圏を中心に大流行を来たし
ている「風疹」というウイルス感染症について、このまま何も触れずに看過する
わけにはいきません。
横隔膜に関係する胸部レントゲン所見の解説は次回以降に譲るとして、今回は、
現在社会問題化している風疹についてのお話をいたしましょう。

 皆様がお持ちの風疹についてのイメージは、「子供が罹患する感染症」や、「
別名を『三日はしか』というくらいだから、すぐ治る病気だろう」といったとこ
ろなのではありませんか。
 確かに、かつて風疹は主に小児科で診察する疾患でした。大人の方を診察する
内科医には、あまり縁のない感染症であったと言ってもよいでしょう。ところが
近年、当欄で以前ご紹介した百日咳などの感染症と同様に、風疹は成人の男性が
全罹患者の多くを占めるような病気になってしまったのです。
 厚生労働省によると、2012年の風疹患者の70%以上が男性で、しかもそ
のうちの80%が20歳代から40歳代の方だったという調査結果が出ています。
さらに今年は、3月末の時点で早くも昨年の全患者報告数を突破しており、風疹
がいかに速いスピードで成人の間に蔓延しているかが分かります。
 また、そういった成人患者の急増に伴い、風疹への根本的対策も見直さざるを
得なくなってきました。それは、合併症に対する配慮です。
 先述のように、風疹に「三日はしか」という別名があるのは、はしか(=麻疹)
の症状を軽くしたような印象があるからです。現に、麻疹と風疹では感染力や合
併症の種類などに大きな差があり、麻疹は罹患すると大変だけれど、風疹は何も
しなくてもすぐ治る、という基本的な認識が世間には流布しています。しかし、
麻疹だけに注意が必要なのではなく、風疹の合併症がきわめて深刻な事態を惹起
することを知らなければなりません。
 その合併症は「先天性風疹症候群(C R S)」と言い、罹患した方の子供に継承
されてしまう悲劇的なものです。風疹の抗体を持っていない、あるいは少量しか
持っていない妊娠初期の女性が風疹に感染すると、お腹の中の胎児にまでウイル
スが感染し、高率でこの症候群が発生してしまうのです。具体的には、心疾患(
心奇形)・白内障・難聴の3つを主体とした様々な症状が、生まれてくる赤ちゃ
んに起こります。
 そして現在、この悲劇が最も起こりやすい妊娠適齢期の女性の皆様こそ、ちょ
うど予防接種法の改正の端境期に成長された世代(今の25歳から34歳)であ
り、風疹ワクチンの接種をお受けになっていなかった方々なのです。
 多くのウイルス性疾患と同様、風疹にも効果的な治療薬はありません。感染を
予防するためのワクチン接種しか方法はないのです。今、各地の自治体がワクチ
ンの助成を進めているのは、大変に喜ばしいことだと言えるでしょう。
 これから妊娠を予定されているご夫婦のように、感染に対する注意が特に必要
な方々はもちろんのこと、ワクチン接種歴のない方や血液検査で風疹の抗体価が
低い方は、老若男女の別を問わず積極的にワクチン接種をお受けになり、直接的
・間接的に、大切な次世代の宝物である子供たちを守っていこうではありませんか。。
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