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■ 第94回 健康診断を活かす ■
〜ノロウイルス、再び大流行へ〜

医師 小澁 陽司
     
 2006年(平成18年)の秋から冬にかけて我が国で大流行し、一躍
その名が知れ渡ることになった「ノロウイルス」。
当コラムでも、その時にノロウイルスの基礎知識について解説をいたしま
したが、2012年12月現在、6年ぶりにこのウイルスによる急性胃腸
炎が日本中で爆発的な大流行を来しています。
以前も解説したとおり、ノロウイルスは6年前に突然発生した全く新しい
ウイルスというわけではありません。記録を遡ると、1960年代にアメ
リカのオハイオ州ノーウォークで集団発生した胃腸炎の患者から発見され
たのが最初の報告で、のちに、このノーウォーク(Norwalk)という地名
の頭の3文字を取り、ノロウイルス(Norovirus)と命名されたのです。
日本でも、以前から毎年冬場になるとそれなりに流行が認められてはいま
したが、2006年の大流行以後は毎年本格的な流行が続いており、とり
わけ今冬は、この10年間の中で2006年に次ぐ大規模な流行となって
しまいました。
 その理由をお話しする前に、ウイルスという小さな脅威について若干の
説明が必要でしょう。
 ウイルスは自分自身が細胞を持っていないため、実は生物と見なされて
はいない存在です。ただし、遺伝子を持っているために動物の細胞内で増
殖することが出来るという特徴を有しており、これがウイルスをとても厄
介な存在にしている点なのです。つまり、ウイルスは増殖をする時、他人
の栄養分を使って増えていくわけで、我々生命体にしてみれば、ウイルス
感染後はいわば「軒を貸して母屋を取られる」という状態になり、どんど
ん衰弱していってしまうことになるのです。
 さらにウイルスは、自分のことを守るためにマイナーチェンジを繰り返
し、同じ種類のウイルスでありながら、いくつもの遺伝子型を作り上げま
す。
 この遺伝子型が、そのウイルスの感染力や発症時の症状の強弱を決定し
ます。そして、遺伝子型が何種類も存在するために、ウイルスは以前感染
した時とは違う新しいウイルスとして、過去の感染の際に人体内に構築さ
れた免疫機能(ウイルスに対する攻撃力)の包囲網をかいくぐり、同じ人
間に再び感染して大暴れすることが出来るのです。
 さて、今シーズンに流行しているノロウイルスが、なぜ去年流行したノ
ロウイルスよりもはるかに大騒ぎとなっているのでしょうか。その理由と
して挙げられるのが、ウイルスの「突然変異」です。
 現在流行しているノロウイルスは、2006年の激烈な症状を呈したウ
イルスの遺伝子型の突然変異した種類が主となっていることが判ってきた
のです。そのため、2006年と同様にきわめて感染力が強く、症状も激
しいのだと推測されています。
 早いもので、前回の大流行から6年が経ちました。しかし、現時点でノ
ロウイルスに効果的な薬はまだ開発されておりません。我々は依然として、
感染を予防することが第一で、もしも感染してしまった時は拡散防止に努
めるしかないのです。
 感染した患者さんの吐瀉物、下痢に含まれるウイルスが指などを介して
口から感染するケース、二枚貝を中心とした貝類を充分に加熱せずに食べ
て感染するケースといった感染経路にも変わりはありませんが、今回は飲
食店での食中毒が全国的に数多く報告されています。飲食関係のお仕事に
従事されている方には、例年以上のご高配を重ねてお願い申し上げます。
            
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