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■ 第92回 健康診断を活かす ■
〜長引く咳について@

医師 小澁 陽司
     
 最近、「咳が長引いて止まらない」という主訴で、内科の外来を受診
される患者さんが増加しています。
 この厄介な咳の正体とは、一体何なのでしょうか。
実は、長引く咳と一口にいっても、診断や治療の観点から、大きく2つ
に分けて考えなければなりません。
 ひとつは、急性の咳。これは、咳が出始めてから3週間以内に治まる
ものです。
 そしてもうひとつは、慢性の咳。こちらは、出始めてから8週間を過
ぎても治まらない咳のことを指します。
 これらの症状を引き起こす要因は多岐にわたりますが、さらに大別し
てしまうと、急性の咳の原因となるのは主に呼吸器系の感染症で、慢性
の咳の主な原因は、非感染性の呼吸器疾患(喘息や慢性閉塞性肺疾患な
ど)や胃食道逆流症といった病気が挙げられます。
 その中で、今最も注目されているのが、一連の呼吸器感染症でしょう。
連日、ネットやテレビのニュースで、患者数の増加が盛んに報じられて
いるマイコプラズマ肺炎などは、長引く咳の原因の代表的なものであり、
百日咳と並んでしばしば問題となる疾患です。 
 それでは今回から、現在我が国でトピックスとなっている、長引く咳
を伴うこれらの呼吸器感染症について、何回かにわたってご説明をして
まいりましょう。
 まず最初は、マイコプラズマ肺炎について。
 日本におけるマイコプラズマ肺炎は、4年ごとに大流行する感染症と
して以前から有名でした。しかもなぜか、オリンピックの開催年に合わ
せて流行するという、不思議な周期を持つ肺炎だったのです。
 ところが、今やその周期性は崩れ、ほぼ毎年流行するようになった上
に、昨年(2011年)から現在に至るまで長期的な患者数の増加が続
いており、さらに今年の10月に入ったとたん、罹患者数が急増してき
たことがニュースを賑わせているのは、皆様ご存知だと思います。
 もっとも、マイコプラズマ肺炎は学童期の患者さんが大半で、成人の
発症数自体はそんなに多くありません。しかし、内科を受診される若年
成人の長引く咳の鑑別診断を行う上で、マイコプラズマ感染症を無視出
来ないというのは、症例数全体の増加率を考えると当然のことなのです。
このマイコプラズマは細菌の一種ですが、ちょっと変わった存在で、ウ
イルスと細菌の中間の性質を持っています。咳をしている患者さんと接
触することで感染し、2〜3週間の潜伏期間を経たのち、乾性咳嗽(い
わゆる空咳)、発熱などを主症状として発症します。大部分の患者さん
は、「マイコプラズマ気管支炎」の段階で回復の方向に向かいますが、
解熱後も3週間あるいはそれ以上咳が続くケースも多く、さらに「マイ
コプラズマ肺炎」となって重症化することもあるため、日常診療におい
て問題となるわけです。
 治療は、マクロライド系などの特定の抗生物質を内服します。しかし
最近では、従来使用されてきた抗生物質が効かない菌も出現しており、
他剤を用いる場合も増えてきました。その点が、今後のマイコプラズマ
治療の課題と言えるでしょう。
            
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