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■ 第89回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その71〜

医師 小澁 陽司
     
 前回までの当コラムでは、胸部レントゲン検査で認められる代表
的所見のうち、肺野において指摘されるものをご紹介してまいりま
したが、今回からは「胸膜」に関係した様々な所見を解説してゆき
ましょう。
 それではまず、胸膜とは何かについてのお話しです。
 このコラムですでに触れたように、胸膜は、胸郭という肺を守っ
てくれる鎧(よろい)の中に存在します。胸膜には2種類あり、胸
郭のすぐ内側(胸壁)に張り付いている方が壁側胸膜、臓器である
肺を覆っている方が臓側胸膜と呼ばれています。柔らかい肺を覆う
胸膜は、いうなれば肺に着せている肌着のようなものでしょう。
それら2種類の胸膜に挟まれた狭い空間を胸膜腔といい、ここに溜
まる水を胸水と呼びます。胸水は健常人の胸膜腔にもわずかに存在
し、呼吸の際に胸壁と肺とが摺り合う時の潤滑油的な働きをしてい
ますが、問題となるのは病的な状態の時に出現するものです。
以下、その詳細についてご説明をいたしましょう。ちなみに健診結
果表への記載は、「胸水貯留」という所見名になります。
 
G胸水貯留 
 何らかの原因で胸膜腔に胸水が貯留してくると、胸部レントゲン
写真ではその部分が白くなってきます。正常な胸部レントゲン写真
(立って正面から撮影した場合)を見た時、左右の肺の一番下はそ
れぞれ下向きに尖っているのですが、胸水が重力方向に溜まってく
るとその尖った部分が丸くなり、白い陰影が肺を侵食するかのよう
に拡がってくるのです。
この胸水を性質から大別すると2種類のタイプがあり、ひとつは滲
出性胸水と言い、もうひとつを漏出性胸水と言います。
滲出性とは、血管の壁から血液中の蛋白質や白血球、細胞成分など
が水分とともに滲み出してきた濃い胸水で、原因疾患としては肺が
ん、悪性胸膜中皮腫などの悪性腫瘍、肺炎や結核といった感染症、
膵炎などの炎症性疾患、関節リウマチなどの膠原病が挙げられます。
一方、漏出性とは、浸透圧の変化などによって血管から水分だけが
漏れ出したため、比較的さらりとしている胸水で、原因疾患として
は心不全、肝硬変や腎臓のネフローゼ症候群(これらの疾患は、腹
水も一緒に出現します)などが代表的なものです。
また、特殊な胸水として、胸部の外傷によって血液が貯留してしま
う血胸や、感染症によって膿が溜まってしまう膿胸などもあり、
健診の胸部レントゲン所見欄に「胸水貯留」と記載があった時、
一刻も早い精密検査が必要となるのはこれでもうお解りでしょう。

            
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