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■ 第88回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その70〜

医師 小澁 陽司
 F肺嚢胞
 これは、「はいのうほう」と読みます。
 嚢胞という所見名自体は、ご存知の方も意外と多いでしょう。
健診や人間ドックの腹部超音波(エコー)検査などで指摘されること
が多い肝嚢胞や腎嚢胞、そして女性の乳腺超音波検査で見つかる乳腺
嚢胞などと同じ名称だからです。
 基本的に嚢胞とは、体の色々な場所に出来る「丸い袋状の構造物」
のことを意味します。多くの場合、発生原因ははっきり解っておりま
せん。嚢胞の中に入っている内容物も様々で、例えば肝臓や腎臓の中
に出来た嚢胞ならば内容物は水分ですが、女性の卵巣に出来るチョコ
レート嚢胞(子宮内膜症性卵巣嚢胞)の場合は、卵巣内の密閉された
嚢胞の中で月経が繰り返し起きているのと同じ状態になりますので、
貯留する内容物は古い血液ということになります。
 さて、話を肺嚢胞に戻しますと、肺に出来る嚢胞の中身は「空気」
です。
 先述したように、嚢胞とは丸い袋状の構造物ですから、例えるなら
ば、ぱんぱんに膨らませて密封した紙風船のようなものが肺の中に存
在するといったイメージになるでしょう。肺嚢胞は大きいものから小
さいものまでサイズは様々ですが、発生してくる過程の違いなどによ
り、ブラとかブレブといった呼び方で区別されています。
 いずれも胸部レントゲン検査では特徴的な所見を呈し、肺の本体の
色とはちょっと違った真っ黒な像となって写りますが、この黒い部分
こそが肺嚢胞の中身である空気というわけです。
 そして、厄介なことにこの肺嚢胞は、紙風船と同じように時々破裂
することがあるのです。
 若くて痩せている男性が、ある時突然、胸痛と呼吸困難に襲われて
医療機関を受診された時、我々は真っ先にこの肺嚢胞の破裂を考えま
す。
 これが有名な「気胸」という病気で、胸を打撲した既往などがなく、
自然に嚢胞が破裂して肺が小さく縮まってしまう状態を自然気胸と呼
んでいます。肺を守る鎧のような胸腔という場所の内側は、大気圧よ
りやや気圧が低く、このために肺は大きく膨らんでいられるのですが、
その肺の一部である嚢胞が破れて、そこから空気が流入してくると胸
腔の内側が大気と同じ気圧になってしまい、肺は一気にぷしゅーっと
小さくなってしまうのです。
 肺嚢胞は、このように突然牙を剥くことがありますので、健診やド
ックでご指摘をお受けの方は、普段からその症状にご注意ください。

            
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