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■ 第84回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その66〜

医師 小澁 陽司
 今号から、胸部レントゲン(X線)検査の代表的な所見について解説を
したいと思います。

 それではまず、肺野において認められる所見を列挙していきましょう。
 体の正面から胸部をX線で撮影した際、写真の中央部には心臓の陰影や
背骨が白く写りますが、その左右に黒く写る「肺そのもの」のことを肺野
と呼びます。X線で空気を撮影すると黒く写るため、空気を多く含んでい
る肺は当然、レントゲン写真において全体が黒っぽく見えるのです。

 肺野は胸部レントゲン写真上の大部分を占めているため、最も数多くの
所見が指摘される場所となっています。

@円形陰影:その名の通り、円形(または楕円形)を呈する陰影のことで
す。

 実は、円形陰影とはあくまで総称で、その大きさにより名称がそれぞれ
分けられています。ただし、全世界的に統一された基準はなく、大きさの
定義は呼吸器専門の医師や放射線科の医師によって様々ですが、おおむね
直径が3cm未満の円形陰影を「結節影」、3cm以上の陰影を「腫瘤影」と
しています。

 また、結節影よりさらに直径が小さい陰影は「粒状影」と呼ばれ、腫瘤
影よりさらに大きな陰影は「塊状影」と呼ばれています。

 結節影や腫瘤影が単発で認められた時は通常、肺の腫瘍性病変、肺結核
や真菌症など肉芽腫を形成する感染症、膠原病の一種などが疑われますが、
中でも腫瘍性病変には悪性と良性があり、悪性腫瘍の代表はもちろん肺が
んですので、いずれにせよこの所見を指摘されたら必ず胸部CT検査を受
けることが必要となります。

 一方、小さくて丸い粒状影が多数認められた時にも、各種の肺炎や結核
(特に『粟粒結核』という、全身に結核菌の感染が広がった状態でよく見
られます)、びまん性汎細気管支炎や肺がんなど、多岐にわたる疾患の存
在が考えられるため、さらに詳しい検査が必要です。

 また、女性の場合、左右にある乳頭がX線を通すと円形に写って見える
ことが多いため、診断の際に紛らわしい場合もあります。

A多発結節陰影:これは、先述した結節影が肺野に多数見えるものです。

 この陰影を発見した時も、真っ先に考えるのはやはり肺の悪性腫瘍なの
ですが、単発の結節影が原発性肺がん(最初から肺に発生するがん)を疑
わせるのと違い、多発性の場合は他の臓器のがんが肺へ転移してきた「転
移性肺腫瘍」を最も疑います。

 そのほか肺の感染症などの可能性もあるとはいえ、この所見があった時
はとにかくすぐに胸部CTを受け、転移性肺腫瘍の有無を調べなくてはな
りません。同時に、肺以外の臓器にがんが存在していないかどうかの全身
検索をするのも重要でしょう。
            
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