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■ 第81回 健康診断を活かす ■
~喫煙関連疾患について②~

医師 小澁 陽司
 今号も、喫煙関連疾患についての解説を続けます。

 ③循環器疾患:循環器とは、心臓を中心として体中を循環している血液の
経路に関係する器官の総称です。心臓や大動脈、そして末梢の血管に至るま
で、血液の流れる場所はみんな循環器と呼ばれ、そこに起こる病気を循環器
疾患と言います。

 したがって、心筋梗塞や狭心症、心臓弁膜症(心室中隔欠損症など)、心
不全、感染性心内膜炎、動脈硬化症、高血圧症、脳血管疾患(脳梗塞、脳出
血など)、大動脈瘤といった疾患が循環器疾患の範疇に入ります。

 これらの循環器疾患の中で、その発症と喫煙との関係が特に深く、喫煙を
続けていると確実に病状が悪化すると言われているものを、次にいくつかご
紹介しましょう。

 a)虚血性心疾患…喫煙と最も関係の深い循環器疾患は、心筋梗塞や狭心症
を代表とする虚血性心疾患です。心臓には、心筋に酸素や栄養を与えるため
の冠動脈という動脈が走っていますが、この冠動脈の内腔が動脈硬化などで
狭くなり、供給すべき酸素がそこから先の心筋に行き渡らなくなることで心
筋梗塞や狭心症は発症します。

 喫煙はこの動脈硬化を促進させ、虚血性心疾患の発症リスクを決定的に高
めるのです。

 b)動脈硬化…次に、その動脈硬化の発症機序をご説明しましょう。たばこ
の煙の中に数多くの危険な物質が含まれていることは、前回お話しした通り
です。それらの有害物質の中で動脈硬化を促進させるものが、活性酸素(フ
リーラジカルと呼ばれるものの代表で、様々な細胞を攻撃しては障害を引き
起こす悪者)、一酸化炭素などの物質です。喫煙によって体内に入った活性
酸素は、血液中で血管壁の内皮細胞を破壊します。同じように一酸化炭素も
血中で血管壁の細胞を破壊しますが、一酸化炭素はさらに血中の酸素の運搬
も阻害し、全身への酸素供給にも悪影響を及ぼします。こうやって破壊され
た血管壁は修復されずに硬くなり、そこにLDLコレステロールが沈着して
動脈硬化は徐々に進行してゆくのです。

 c)脳血管疾患…動脈硬化が引き起こす恐ろしい疾患をもうひとつ。それは、
脳血管疾患です。動脈硬化によって内腔が狭くなった脳の動脈に、これもま
た喫煙によって発生しやすくなった血液中の血栓(血液が固まったもの)が
詰まると脳梗塞となり、硬いようでも実は脆い動脈硬化のある脳血管が、急
な血圧上昇などにより破けてしまうと脳出血になります。

 d)その他の循環器疾患…発症した症例のほとんど全員が喫煙に関係してい
る、閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)という疾患があります。これは手
足の末梢血管に閉塞が起こり、そこから先に酸素が運搬できないため、手足
の末端の冷えや間欠性跛行(休み休みしないと歩けない状態)、甚だしい時
は手足末端の潰瘍・壊死を起こします。

 その他身近な疾患としては高血圧があり、糖尿病などの生活習慣病との組
み合わせでどんどん生命を脅かすリスクが上昇しますので、一日も早い禁煙
が望まれるのは当然のことと言えるでしょう。
            
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