筆者の父は、消化器外科の専門医です。
若い頃からがん治療に取り組み、現在確立している「がんの三大治療」
を長年にわたって実践してまいりました。
外科医である父はもちろん、三大治療のひとつである外科手術を担当し
てきたわけですが、残りの二つの治療法の重要性も深く認識し、その将来
性を以前から、そして現在も語り続けております。
この残りの二つの治療法とは、「抗がん剤治療」と「放射線治療」です。
これら三つの治療法に加え、乳がんや前立腺がんなどの治療に用いられ
る「ホルモン療法」などをうまく組み合わせることで、現在のがん治療は
集学的治療法として成立しています。
抗がん剤治療などについてはいずれ稿を改めてご紹介いたしますが、今
回は最近特に飛躍的な進歩を遂げた放射線治療の詳細を、前回に引き続き
ご説明いたしましょう。
先述したように、がんを代表とする悪性腫瘍に対してX線などの放射線
を照射し、悪性細胞のみを死滅させるのが放射線治療の基本的な考え方で
す。
一見、治療対象となる臓器に存在する悪性の細胞のみならず正常細胞ま
で放射線照射によって死滅してしまうイメージがありますが、きわめて平
易に言うならば正常細胞はしっかりと強く、悪性の細胞は未熟で弱いため、
結果的に悪性の細胞だけがダメージを受けることになり、この性質を利用
して治療は行われています。
それでは放射線治療の具体的方法ですが、考え方によって分類法が多少
違いますので、本コラムでは大きく二つに分けて解説しましょう。
治療方法には、「外部照射」と「内部照射」の二つがあります。
外部照射法はその名のとおり、体の外側から放射線を標的臓器に照射する
もので、この方法が現在最もポピュラーです。がんの根治療法だけではな
く、がんによって起こる症状の緩和に使用されることもあります。また、
手術の最中に直接患部への照射が行われる場合もあります(術中照射)。
一方、内部照射法の代表が密封小線源治療法で、これは放射性物質が外
に漏れないような容器に入った装置を、直接体内のがんの近くに置いて放
射線照射するというものです。さらに内部照射には、放射性物質の経口投
与や注射などの方法もあり、これは全身的放射線治療と呼ばれています。
次回は、放射線治療で用いられる機器を中心にお話しを進めましょう。
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