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■ 第71回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その61〜

医師 小澁 陽司
 本コラムではこの数回、胃・十二指腸潰瘍のバリウム所見に関連した話
題を続けてまいりましたが、そもそも胃潰瘍や十二指腸潰瘍とはどんな病
気なのでしょうか。今回はその基本的なお話しをいたしましょう。

 これまで何度か触れたように、胃は胃液という消化液を分泌します。そ
の胃液の中に含まれ、消化の中心となるのが胃酸です。胃酸は強酸で、蛋
白質を分解して腸内での消化吸収を容易にしたり、口から入った細菌やウ
イルスなどを退治してくれるありがたい存在なのですが、それは胃の内側
の粘膜が胃酸の攻撃を巧くかわし、きちんと保護されるような構造になっ
ているからこそ可能な話であるわけです。

 その粘膜保護システムが均衡を欠き、防御力が低下してしまうと、胃酸
によって胃粘膜の表面がまるで道路工事のように掘り返され、削り取られ
た状態になってしまいます。
これが、胃潰瘍です。

 一方、十二指腸潰瘍は、もともと胃酸に対して強い防御力を持たない十
二指腸(特に十二指腸球部)の粘膜が、何らかの原因で分泌過多となった
胃酸に蹂躙され、それを防ぎきることが出来ずに粘膜が削られるため発症
します。

 胃潰瘍の原因である、胃粘膜の防御力の低下は、ストレスや喫煙、飲酒、
鎮痛解熱剤の使用などによって起こります。また、十二指腸潰瘍の原因で
ある胃酸過多は、ヘリコバクター・ピロリ菌が胃内に存在するために誘起
されることが多いのですが、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の発生原因のベースに
は、ともにヘリコバクター・ピロリ菌の感染が深く関与していると考えら
れています。

 そして、胃・十二指腸潰瘍の両者に共通した症状として有名なものは、
みぞおちの痛み(心窩部痛)です。鈍い痛みから激しい痛みまで、病気の
重症度によって痛みの程度は様々ですが、あまりに激烈な痛みの場合は、
潰瘍からの出血や、胃・十二指腸に穴が開いてしまっている場合(『潰瘍
穿孔』と言います)もありますので、そういった時は大至急、消化器病専
門の医療機関を受診して頂かないといけません。

 最後に治療法ですが、現在、出血のない潰瘍に対する最もスタンダード
な方法は薬物療法です。胃酸が分泌されるのを抑制したり、胃粘膜を保護
して防御力をアップさせる薬などを使用しますが、先述したように、潰瘍
からの出血があったり穿孔を起こしている場合には、内視鏡を使用した治
療を行うほか、甚だしい時には開腹手術が必要になる場合もあります。

 また、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌も、有効な治療法のひとつと言
えるでしょう。
            
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