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■ 第65回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その55〜

医師 小澁 陽司
 外来を受診された患者さんにヘリコバクター・ピロリ菌のお話しをすると、
ピロリ菌と胃がんとの関係などはご存知でも、その治療法の詳細については
首をひねる方が多いような印象を、筆者は以前から持っておりました。
その印象につき先日、親友の内科医と筆者の妹(内科医)にそれぞれ質問を
してみたところ、彼らもやはり外来をしながら、同じような印象を受けてい
たそうです。

 現在、ピロリ菌の治療に対する皆様の関心は高まってきていても、実際に
治療を受けないと詳細までお解りにならないのは当然のことなのでしょう。

 そこで今回のコラムでは、ピロリ菌の治療法やその問題点について簡単に
ご説明したいと思います。

 まず、何といっても相手は細菌ですので、ピロリ菌を除菌するための治療
薬の柱になるのは「抗生物質」です。現在我が国では、2種類の抗生物質と
胃酸の分泌を抑制する胃薬を併用する方法が、保険適応のある治療法として
認められています。

 具体的には、アモキシシリンとクラリスロマイシンという名前の2種類の
抗生物質と、胃酸分泌抑制薬であるプロトンポンプ阻害薬の合計3剤を1日
2回ずつ、合計1週間内服して治療は終了です。

 とても簡単な方法であることがお解かり頂けましたでしょうか?

 ただし、ピロリ菌を除菌するにはいくつかのハードルも存在します。

 まず、保険を使ってピロリ菌の除菌をする場合には、保険適応のある病気
が限られてしまいます。従来は「胃潰瘍」、「十二指腸潰瘍」の2つの疾患
にしか保険適応がなく、つい最近それに加え「胃MALTリンパ腫」など3
つの疾患に対しても保険が適応されることになりましたが、今もまだ、将来
的に胃がんが発生するリスクを持つ「慢性萎縮性胃炎」に対しては、保険を
使った除菌が認められていないのが実情です。これについては各方面より、
一日も早い保険適応の追加承認が望まれています。

 また、ピロリ菌除菌の薬を内服した際に起こる副作用もハードルのひとつ
です。下痢や軟便といった消化器症状から、味覚の異常、発疹、肝障害など
の症状が出る場合があり、途中で治療を中断せざるを得ないケースもあるの
です。

 さらに、以前は1回の治療だけで患者さんの80%以上が除菌に成功して
いましたが、最近は抗生物質に対する耐性を持つピロリ菌が増え、最初の治
療では除菌が完全に達成されない症例も増加してきました。そういう場合は
「二次除菌」といって、薬の内容を変更して再び除菌にトライするわけです
が、それでも除菌できない場合もあり、ピロリ菌と人類との闘いは、今よう
やく新たなステージに入ったばかりなのだということを実感させられます。
            
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