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■ 第63回 健康診断を活かす ■
〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その53〜

医師 小澁 陽司
 健康診断で胃内視鏡検査をお受けになった方の中には、その結果欄に「萎縮性胃炎・要経過観察、一年後にまた内視鏡検査をお受けください」などと記載されているのを目にされた方も多いと思います。

 近年、徐々に一般的な認知度が上がりはじめたこの萎縮性胃炎ですが、なぜ胃炎くらいで一年後に内視鏡による再検査が必要になるのかというと、実は萎縮性胃炎のある胃は将来的に胃がんの発生する確率が高くなると考えられているため、その存在が確認されたら必ず追跡調査をしなくてはならない曲者であるからなのです。

 萎縮性胃炎とは、一般的になじみ深い「慢性胃炎」とほぼ同義語と思って差し支えありません。

 要するに、胃粘膜が長期にわたって慢性的に炎症を繰り返し続けると、そこがだんだん硬く薄くなり、萎縮している状態になってしまった結果、その部分の細胞が胃がんの発生しやすい土壌に変化してしまうというわけなのです。

 現在、萎縮性胃炎が起きる最も重要な原因は、胃粘膜へのヘリコバクター・ピロリ菌の長期感染であると考えられているのですが、その詳細についてはまた後日、稿を改めてお話ししましょう。

 さて、初めてご自分の胃に萎縮性胃炎があるかどうかを皆様が調べるには、最初から胃内視鏡検査といったような大がかりな方法しかないのでしょうか?

 幸い、そんなことはありません。

 萎縮性胃炎の有無のチェックを採血だけで簡単に行うのが、本コラムの第61回の冒頭で少しだけご紹介した「ペプシノーゲン測定検査」という方法なのです。

 この検査は、胃の粘膜から分泌されて血液中に存在しているペプシノーゲンTとペプシノーゲンUという物質を測定することにより、その値の差で萎縮性胃炎の有無や進行の程度を調べることができます。萎縮性胃炎が強ければ、早期胃がんが存在している可能性もあるということですから、この検査が早期胃がんのスクリーニングとして脚光を浴びるのも当然なのです。

 しかし、くれぐれも大事なのは、このペプシノーゲン検査が「胃がんそのものの有無が判る検査ではない」ということです。検査結果が陽性だった方は、早期胃がんの存在する可能性を追究するため、必ず胃内視鏡や胃バリウム検査などの画像診断をさらに組み合わせた上で、現在の胃の中の状態を正確に把握する必要がありますし、また、陰性だった方でも胃がんが絶対に存在しないというわけではなく、進行胃がんなどでは検査結果が陰性になってしまうことがありますので、胃がんを含めた胃病変のチェックのためには、やはりある程度定期的な画像検査が必要だと思われます。

  いずれにせよ、このペプシノーゲン検査は早期胃がんを発見するための「きっかけ」としては大変に有用なわけですから、今後の胃がん検診においてさらに普及し、大活躍することは間違いありません。
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