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■ 第59回 健康診断を活かす〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その50
 医師 小澁 陽司 ■
 人間の話ではなく、いきなり牛の話で恐縮なのですが、牛にはなんと胃が四つもあります。

 食べることが大好きな筆者などは、歳を重ね若い頃よりも満腹になるのが早くなってしまうのを感じるたび、単純に「ああ、人間にも胃が何個かあればいいのに…」などと思うこともありますが、実は牛の最初から三つめまでの胃は、繊維質を消化しやすくするために変化した、元来「食道」に相当する部分であり、胃液のような消化液は分泌されないのだそうです。

 ですから、牛は主食である牧草を大量に食べたあと、最初の三つの胃(食道?)の中で食物を行きつ戻りつさせる、いわゆる反芻を繰り返して繊維質の分解を行い、四つめの本当の胃ではじめて消化を可能にするため、このように胃をたくさん持っているというわけなのです。筆者のようなあれもこれも食べたい、お酒もたくさん飲みたいから何個か胃が欲しい!などという不埒な考えは早々に引っ込めなければなりません。

 さて、そう考えるとたったひとつの人間の胃は、シンプルな構造ながらも実に機能的に出来ていることが分かります。今回はそれをご説明しましょう。

 前回のこのコラムで触れましたが、胃は胃袋とも呼ばれるように、丈夫な袋状の構造をしています。その袋の入口(食道との境界部)を「噴門」と言い、出口(十二指腸との境界部)を「幽門」と呼びます。それぞれが必要な時に開門し、内容物を通過させます。そして、袋である胃の本体はそのものずばり「胃体部」と言いますが、ここの構造が大変にうまく出来ているのです。

 胃が伸び縮みする臓器であることはご存知ですよね?満腹になった時の胃の容量は、およそ1.5〜2?くらいですが、空腹時には100ml前後の容量しかない小さい臓器がなぜそこまで膨らむことが出来て、なおかつ簡単に破裂したりしないのかといえば、それは胃の壁の構造に秘密があるのです。

 胃壁は三つの層から構成されています。一番内側、つまり胃の中で直接食べ物と接するのが「胃粘膜層」で、ここには胃底腺という胃液を分泌する腺が存在しています。粘膜層の外側(直下)にあるのが「粘膜下層」、そして胃の一番外側にあるのが「筋層」です。この筋層はさらに三つの層(内斜走、中輪走、外縦走)から構成されていて、この三つの筋層が織りなすことにより、きわめて丈夫な繊維のような胃壁が出来上がっているのです。だからこそ胃は伸縮自在となって、食べた物を融通無碍に撹拌したり、その後しばらく貯留させることが出来たりする上、大食い選手権に出場した方がどれだけものすごい量のホットドッグを食べても、胃破裂を起こさずに済んでいるというわけです。。

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