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■ 第52回 健康診断を活かす〜知っておきたい「健康診断の基礎知識」その44〜
 医師 小澁 陽司 ■
 新型インフルエンザのトピックスを挟み、ここ数回、本コラムでは心電図所見のご説明について紙面を割いています。

 やや旧聞に属しますが、今年の3月に開催された第3回東京マラソンに出場したあるタレントさんが、レース中に急性心筋梗塞で倒れ心肺停止状態となり、近くにいた救護担当の医師団による蘇生措置で一命を取り留めたというニュースが大きく報道されたことをご記憶の方も多いでしょう。

 後日、このタレントさんの所属事務所から公式に発表された病名は「急性心筋梗塞による心室細動」でしたが、今回のコラムではこの心室細動がどういう不整脈であり、なぜ怖いのかをご説明していきたいと思います。

 心室細動は、前々回ご説明した心房細動と一見よく似た名前ですが、その病態と予後には天と地ほどの差があります。

 心房細動は慢性的な経過をたどり、やがて脳梗塞の発症の一因となりますが、心室細動は、動脈血を全身へ送り出すための最重要部分である「心室」が細かく振動してしまう状態であり、いわば心臓のポンプ機能がほぼ完全に失われる状況ということになります。つまり、心室細動が長く続くと、脳をはじめとする重要な臓器に全く血液の供給が出来なくなるわけですから、その先に待ち受けているのは「死」なのです。

 しかも、心室細動の持続する時間で明暗が分かれるのは、わずか数分。心室細動が出現すると人間は数秒で失神して呼吸停止し、そののち脳への血流供給が3〜5分ほど途絶すると、回復が不可能な脳障害に至ると言われています。

要するに、心室細動の出現後、以下に速くAED(自動体外式除細動器)などを用いて心室細動を取り除き、心臓を元の正常な拍動に戻すのかが、その患者さんの予後を決定するのです。

 心室細動は、陳旧性心筋梗塞などの心疾患の既往がある方に合併することが多いのですが、今回のタレントさんのケースのような急性の心筋梗塞に伴う場合や、脱水、疲労、低カリウム血症などが誘因となることもあり、生活習慣にも日頃から注意が必要です(特に肥満の方は要注意!)。

幸い、このタレントさんは間髪を入れず除細動が成功したため、回復経過がきわめて順調であり、早々と芸能活動を再開されても支障がないようです。

 心よりお祝いを申し上げたいと思います。

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