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■ 第47回 健康診断を活かす
~知っておきたい「健康診断の基礎知識その40~ 医師 小澁 陽司 ■
 ③ 房室伝導障害:前回の②でご説明した「心室内伝導障害」と一見名称が似ていますが、②は心臓の心室内を流れる電気の経路がブロックされたものであるのに対し、この房室伝導障害は「房室」、すなわち「心房」と「心室」との間に流れる電流がブロックされた状態を意味します(本来、房室伝導障害は、後日ご説明する予定の『不整脈』のカテゴリーに入るのですが、今回はこの項目だけ単独で解説します)。

心臓を動かすための電気は、心臓の右心房にある「洞結節」という場所から規則正しいリズムで発生し、心房を通って心室に伝わっていきます。その経路のちょうど中間のところに、心房と心室をつないでいる「房室結節」という場所があるのですが、そこを中心とした部位で電気の流れが阻害されてしまうことを房室伝導障害(房室ブロック)と呼び、病態の程度に応じて次の三つのタイプに分類しています。

ⅰ)第1度房室ブロック:
最も軽症のタイプです。単に心房から心室へ電気が伝わっていく時間が遅いだけであり、病的な意味はほとんどありません。

ⅱ)第2度房室ブロック:
第1度より悪いタイプで、心房から心室に伝わるはずの電流が一部途絶してしまうため、時々心室が動かなくなる(心臓が収縮しなくなる)状態になってしまいます。これはさらに二つのタイプに分けられます。

 (a)Ⅰ型(ウエンケバッハ型):
心房から心室に電気が伝わる時間が一回の心拍ごとに少しずつ遅くなっていき、やがてとうとう心臓の収縮が一心拍分抜け落ちてしまう状態になるものをこう呼びます。ただしこのタイプは軽症のものが多く、経過観察だけで済む例がほとんどです。

 (b)Ⅱ型(モビッツⅡ型):
同じ第2度でもこちらのタイプは、心房から心室への電気の伝導時間が遅くなるなどの前兆もなく、突然心拍が一回分抜け落ちてしまうものをいいます。突然死などの危険性もあり、精密検査や治療が必要です。

ⅲ)第3度房室ブロック:
完全房室ブロックとも呼ばれ、その名の通り、完全に心房から心室への電流が遮断されてしまう最も重症のタイプです。突然死や失神発作を起こすきわめて危険な状態ですので、心臓ペースメーカーを使った治療が必須となります。

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